僕の愛しい泥棒娘
それから3日後にはワイナリー家の裏口に立
って警備の様子を確認し忍び込む算段をして
いると言う訳だ。

アウスレッドは上下とも黒い服に金髪の目立
つ髪はこれも黒の毛糸の帽子で隠している。

真っ青な特徴的な瞳はどうしようもない。
金髪で碧眼というのはこの国では、王家に繋
がる血筋を表しているのだ。

アウスレッドは現国王の甥にあたる。父親は
国王の兄なのだ。

今、警備の騎士が裏門を通り過ぎたのでその
時間を書き込んだ。

その時屋敷の庭からこれも黒づくめの男が塀
の上に現れて背丈の3倍はあろうかという高
さの塀から身軽に飛び降りて、小走りで去っ
ていこうとしている。

ワイナリ―家の塀は王都で一番高いと言われ
ているのだ。それなのにさらっと飛び降りた
のだ。

アウスレッドはその男に気付かれないように尾
行することを決めた。

彼は黒のシャツを羽織り腰で裾を縛っている
下にはぴったりとしたズボンをはいている。

ちょっと珍しいズボンだ。乗馬服のズボンでも
ない。それに靴は履いていない。何か別の物を
履いているようだ。

アウスレッドは注意深く観察しながら見失わな
いように後を追った。

少し走った先の大木の所で男は止まった。

あたりを素早く見渡して木の後ろに回り、
木の洞の中から何かを取り出した。

アウスレッドは気配を押し殺して見守ってい
ると男はブーツを出して今はいている物から
履き替えて、乗馬服らしいものに着替えた。

ズボンは脚にぴったりした物の上から履いた
ようだ。上のシャツはズボンの中に入れそし
て、黒い毛糸の帽子を取った。

アウスレッドはもう少しで声を上げるところ
だった。
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