明治誓いの嫁入り──政略結婚から始まる危険なほど甘い溺愛
「では、行ってくるよ。」

誠吾さんは、結婚式の翌日だというのに、もう仕事へと出かけていった。

「さあて、私は……」

朝食の食器を台所に持っていくと、すぐに使用人の女性が駆け寄ってきた。

「若奥様は、ごゆっくりなさってくださいませ。」

「ありがとう。」

その言葉に甘え、私は庭に出て花へ水をやった。

陽の光を浴びて咲く小さな花々が、なんだか健気に見える。

──こうして、ゆっくりと一日が過ぎていくのだろうか。

「刺繍でもしようかな。」

つぶやいて、裁縫箱を手に取る。

けれど、ふと気づけば針を持つ指先が落ち着かず、心は自然と誠吾さんのことを考えていた。

昨夜のぬくもり、優しい声、そして抱きしめてくれた力強い腕……。

胸の奥が甘く疼く。

まさか自分が、こんなふうに夫を待ちわびる気持ちになるなんて──。
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