甘く苦く君を思う
「離れてみて私は色々な人にお世話になりながらここまでやってきました。彼に再会して、正面から向き合い改めて私にはなくてはならない人だと再確認できました。別れのは辛かったですが、それでもあの時間は私たちに必要だったのかもしれないと思えるようになりました」

するとお義父さんは重い口を開けた。

「私たちはなんて強引なことをしてしまったんだと今になって後悔している。あの時は昴のためだと信じて疑わなかった。経営者としてどうにか育て上げなければと必死だった。でもそんなのは私たちの勝手な思いで、この子の気持ちをおざなりにしていた。この前昴に、自分が幸せでないのに社員を幸せにしなければならないのかと問われ、絶句したんだ。昴は今幸せじゃなかったのだと」

その言葉に私は小さく頷いた。

「息子可愛さにとった行動だったが、何ひとつこの子の為にはなっていなかった。そしてその勢いのままに沙夜さんのところにまた押しかけてしまった。毎回こうして私たちが行動するたびに昴の迷惑になっているとようやく気がついたんだ。だから結婚したと聞いてホッとした。知らせてもらえなかったのは自業自得だと思い、私たちはもう何もすべきではないと思ったんだ」

「ごめんなさいね、沙夜さん」

ふたりの声も態度も今までにないほど萎縮しており、こちらの方が恐縮してしまうほどだ。

「今日こうして来てくれた事を嬉しく思うよ」

そんなふたりを見て昴さんは何も言えずにいた。両親の気持ちを聞いて、ただひたすらに自分のことを考えてとった行動であったと改めて感じたのだろう。そんな両親と彼との関係がこのまますれ違ってしまっていいのだろうか。
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