甘く苦く君を思う
「これあけてー」

静かにジュースを飲んでいた渚がお義母さんのところに歩いていき、お菓子の袋を差し出した。それを見て驚いたような表情を浮かべたがすぐに微笑み返し、

「沙夜さん、開けてあげてもいいかしら?」

私に尋ねてくれるところを見てもすごく気を使っているのを感じる。

「はい」

すると嬉しそうに渚にお菓子を開けて渡す。すると「ありがと」と言うと渚はお義母さんの隣に座り込んだ。その様子にまた驚かされる。渚は袋の中からスナックをひとつ取り出すとお義父さんに、もうひとつ取り出すとお義母さんに渡す。

「はい、どうぞ」

ありがとう、と言い、お菓子をふたりは口に運ぶ。その様子を見て「おいしいねー」と同意を求めていた。

「えぇ、おいしいね」

そんな渚の様子に目を細めてお義母さんは見ていた。

「渚には今、私の両親と働かせてもらっているお店の横井夫妻というおじいちゃんおばあちゃんがいるんです。だからきっとおふたりのこともそんな風に見えているのかもしれません。だからこのまま私たちとこのまま平行線を辿るのではなくお互いに歩みよることはできませんか」

私の言葉に3人は顔を見合わせていた。けれど、昴さんだけは首を横に振っていた。

「沙夜には辛い思いばかりさせてきた。だからこれ以上負担に思うことはしてほしくない。一方的に言われてばかりだった沙夜の気持ちを両親にわかってもらいたくて連れてきただけだ。仲よくしてほしかったわけじゃない」

「うん。でも私も親になって子供が何よりも大切だと思う気持ちがわかったの。他人よりも我が子の幸せを第一に願いたいのは痛いほどよくわかる」

「だからといって……」

私は彼の言葉を遮る。

「昴さんだって渚のことをそう思っているでしょ。それに渚が手元から離れて行ったら寂しいよ」

その言葉に押し黙ってしまった。
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