甘く苦く君を思う
翌日、体調の悪さを引きずりながら出勤した。悪い噂を立てられている今だからこそ休むわけにはいかなかった。
ヨーグルトを口にするのが精一杯で、それを水で流し込み厨房に立った。
今日は私の好きなタルトを担当するが、今ひとつ気分が乗らない。生地を型に合わせカスタードやカットした果物を乗せるのもやっとだった。私の様子があまりに目についたのか風間さんが声をかけてきた。

「相川さんって、調子悪いの?」

「いえ……」

「うちは食品を扱っているし、あんまり無理して欲しくない。今日はもう帰なさい」

そう言われると反論は出来ない。私の意地でここにいるわけにはいかない。

「すみません、今日は早退させてください」

周囲は私の様子をチラチラ伺っているが声をかける人はいない。今まで3年ここで働いてきてこんな雰囲気なのは初めてだった。風間さんは噂について耳に入っているだろうが何も言わない。

「あぁ。気をつけて帰って。体調が悪くなるようなら病院に行くといい」

「はい……」

私はロッカーに行くとコックコートを脱ぐ。急に襲ってくる吐き気が辛かったが、ここで座ってしまったら立ち上がれなくなりそう。これ以上ここで迷惑をかけるわけにはいかない。
ふぅと大きく息を吐くとバッグをもち裏口から店を出た。
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