甘く苦く君を思う
予定日が近くなり、お腹の大きさは風船のようになってきた。それなのに昨日くらいからやけに食事が取れるようになり、さっきは夕飯にドリアとサラダ、それに加えて昼間にマリーでアップルパイを貰ってきたのでそれまで食べてしまった。
やはりこの量は食べ過ぎだったのか、さすがにお腹がパンパンで張って苦しい。
横になりゆっくりしていたらウトウトと眠ってしまったようだ。
ふと気がつくとなんだかお腹が痛い。さっきの食べすぎの張り感がより強くなっている気がした。
立ち上がり、トイレに行こうとした瞬間になんだか温かい物が流れ出た。
え?!
慌てるが止められない。
もしかしてこれ破水なんじゃ……。
そう思った途端にお腹の張りではなく痛みを感じ始めた。
どうしよう。
もう生まれてもおかしくないというかバッグも準備してある。
そうだ、タクシーを呼ばないと。そうは思うが準備していたはずの番号がわからない。
バスタオルを当てるが少しずつ流れ出ているのがわかる。

「幸子さん、助けて。破水したみたいなの」

焦る私の声にハッと飛び起きてくれたようだった。

『すぐ行くから待ってなさい。大丈夫だからね』

「……うん」

不安に押しつぶされそうになり泣き声になってしまう。
電話の後ろでご主人を起こす声が聞こえる。

「あなた、起きて! 沙夜ちゃん生まれそうなの。病院に連れて行かないと」

その声に向こうでも飛び起きた音がしている。

「沙夜ちゃん、泣かなくて大丈夫よ。すぐに行くから。赤ちゃんはそんなに早く出てこないんだから玄関で待ってて」

私を宥めると幸子さんは電話を切った。私は少し冷静になれ、病院に電話すると破水し陣痛がきたことを伝えた。
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