甘く苦く君を思う
渚が1歳をすぎた頃からマリーで本格的に働かせてもらうようになり、保育園に通うようになった。
店で準備をしていると不意に幸子さんがいなくなる。何をしているのかと思えば、渚が心配で保育園を外からこっそり覗いてきただそう。それを聞いたご主人も翌日私に仕込みを任せるとこっそり覗きに行っていた。

「渚ちゃん、先生とよちよち園庭を歩いてたんだ。かわいいなぁ」

ただ歩いているだけなのにかわいいだなんてじぃじバカになっていると幸子さんは笑うが、同じようなことをしているので私はふたりを見て苦笑する。
でも身近にこんなにも親切にしてくれる横井夫妻の存在を本当にありがたく思う。
私は計量や片付け、ケーキのカットや簡単な仕上げを中心に行っていたが、徐々に私の腕を認めてくれ、新作ケーキの開発も任せてくれうようになった。
マリーはル・ソレイユに比べるととても小さいが、やりがいを持つことができ、日々充実していた。

2歳になった渚を今は保育園に幸子さんが迎えに行ってくれることが多くなった。いいのかな、と最初は遠慮していたがむしろ行きたいとまで言ってくれお願いすることが増えた。
渚は手を繋ぐと歌いながら飛び跳ねるようにお店に帰ってくる。

「ままー、ただいまー」

「はーい。おかえりなさい。幸子さんもありがとうございます」

ふたりは手を洗いに洗面所に向かう。ここでも渚はずっと歌を歌っている。どうやら今日保育園で習ってきたものらしい。
おやつに新作のケーキを出すと目を輝かせていた。

「ままのケーキはおいしいねぇ」

「渚ちゃん、じぃじのは?」

ご主人が聞くと渚は大きな声で

「だいすきー」

と言う。そしてじぃじはまたメロメロにされてしまった。
< 39 / 105 >

この作品をシェア

pagetop