甘く苦く君を思う
「おじちゃん、へんー」

なんの話をしていたのかケラケラと昴さんを指さして笑っていた。そして彼も楽しそうに微笑んでいる。あんな優しい顔を見たのはいつぶりだろう。彼と別れた時の冷たく固い表情ばかりが思い出されていたが、そうだった、彼はこんな優しい顔をする人だったと胸の奥が熱くなる。
そして笑い合う2人の表情があまりにそっくりで、血の濃さを感じる。
そして私に気がついた渚がこちらを見ると声をかけてきた。

「ままぁー」

椅子からぴょんっと飛び降りると私の方へ走り寄ってきた。私はどんな表情を浮かべていればいいのか分からない。渚の頭をそっと撫でる。

「おわった??」

渚の問いに小さく頷くと渚はジャンプして喜ぶ。

「こーえん、こーえん。すべりだいする」

「そうだね。今着替えてくるからね」

私たちの会話をじっと彼は見つめていた。そして何か感じるものがあったのか、その目は渚に釘付けになっていた。

「俺に……似てる」

そんな声がかすかに聞こえた気がした。その声に私はビクッとしてしまい彼の顔を見られない。
着替えるため渚を連れ、更衣室に入ると力が抜け、椅子に座り込んでしまった。
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