甘く苦く君を思う
夜空を切り裂くように雨が降っていた。
早めに幸子さんが渚を保育園に迎えに行ってくれたおかげで濡れずに帰ってくることができ、今は裏で遊んでいる。
店のシャッターを下ろそうと外に出るとびしょ濡れのスーツ姿を見て息を呑んだ。

「昴さん……」

彼はまっすぐに立ち、私を見つめるその目に迷いがなかった。真正面から話を切り出され、私は突然の出来事に身じろぎもできない。

「俺はもう2度と沙夜を疑わない。沙夜と渚ちゃんを必ず守る」

そこで言葉を切ると彼は唇を強く噛んでいた。雨音が強く、ふたりの間に響く。

「それに……俺はもう一度沙夜を失ったら俺は一生自分を許せない」

その言葉に私の胸は大きく震えた。彼の後悔と、今の強い決意が私の心にまっすぐに刺さる。
気がつくと涙が私の頬を伝う。その涙を見て彼は少し狼狽えていたが、そっと手で私の涙を拭き取る。

「昴さん……私、もう一度裏切られたら立ち上がれないよ」

震える声でそう伝えると、彼は静かに頷いた。

「絶対にしない。命をかけても沙夜を守ると誓うよ」

見上げた彼の瞳に迷いはなく力強い光が宿っていた。
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