甘く苦く君を思う
帰り道、私のアパートまで送ってもらうが、昴さんは寝てしまった渚を抱き上げると部屋まで運んでくれた。
布団の上に下ろすと、じっと寝顔を見ていた。

「この子のおかげで今日反対されずに済んだな。もちろん許されるまで何度でも通うつもりだったが」

「何度もだなんて」

「いや、本当にご両親のお怒りはごもっともだ。もし渚にそんな不誠実な男が現れたら殴り飛ばしてしまうよ」

彼の言葉はすでに親になっていてなんだか不思議だ。

「だから俺はお義父さんに殴られるつもりで行った。そのくらいの覚悟はあったよ」

彼がそんなふうに思っていたなんて驚いた。だから行きの車ではなんだか落ち着きがなかったのね。今までこんな彼を見たことがなかったので少しだけ可愛く思えた。今までの彼はいつでも自信に満ち溢れ、私の一歩先を歩き続ける存在だった。でも今は私にこんな弱いところも見せてくれるようになった。だからこそ、この3年の別れは必要なものだったのかもと思えてしまう。
表面だけでなく深いところでも理解し、曝け出せる存在にこの時間があったからなれたのではないだろうか。

「ありがとう。そんな風に思ってくれてたんだね」

「当たり前だ。それくらいのことをしたんだからな」

「でも私たちの時と同じ。この子がみんなの縁を取り持ってくれたね」

「あぁ。そうだな」

彼の手はそっと渚の頭を撫でる。そんなふたりの様子を見て心の中が温かくなった。
< 93 / 105 >

この作品をシェア

pagetop