甘く苦く君を思う
「沙夜ちゃんは見る目があるな。俺のケーキは日本一美味しいからな」

少し頬を赤くしながらそう話すご主人はとても嬉しそうだった。

「引っ越しをするので今と同じ時間は働けなくなるかもしれないんです。それでも雇ってもらえますか」

「もちろんよ」

ふたりの嬉しそうな顔を見て私も嬉しくなった。
幸子さんに呼ばれ、私はケーキを渡された。箱を開けてみるとそこには「HAPPY MARRIGE」と書かれて、マジパンで作られた彼と私と渚の飾りがつけられていた。カラフルなバラの飾りやキラキラとしたものがたくさんがたくさん付いていてこんな華やかなデザインは見たことがない。

「あの人が昨日の夜にこっそり作っていたのよ。最初はここまで凝っていなかったんだけど、いつの間にか娘を嫁に出すかのように黙々と作業していてこんなすごいものになっちゃったのよ」

ご主人に娘のように思ってもらえていたんだと聞いてまた私の涙腺は緩む。そっと昴さんに肩を抱かれる。

「こんな素敵なものをありがとうございます」

「いや。こんなことくらいしか俺にはしてやれないからな」

照れ隠しのようにぶっきらぼうな言い方をする。そんなご主人に彼もお礼を伝える。

「一生忘れられない思い出になります。本当にありがとうございます」

家に帰った時の渚の喜ぶ顔が目に浮かぶよう。
ここで働き続けることができ、安心して引っ越しをすることが出来る。
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