陰キャな彼と高飛車な彼女 隠された裏の顔
そう、流星5のキャラクターは次のように構成されている。
・レオ……メインボーカル担当(王道で華やか)
・カイ……ダンスエース担当(流れるような動き、海のように自由)
・リク……ラッパー=ブラックホール担当(ダークでクール)
・セイ……|作詞作曲担当(中性的なビジュアルと透明感)
・ユウ……リーダー&トーク担当(包容力があり、まとめ役)
作家・天城セイラは、このキャラクター『セイ』に自分自身を重ねていたのだ。
「なるほどね……高飛車女がラノベ推し活、ね……」
口角をいたずらっぽく上げた天城セイラ――その正体は、星川琉星、30歳だった。
映画館から感動と興奮に酔いしれながら帰宅した夏來は、ご機嫌でさっそく戦利品をベッドに並べた。
ハロウィン仕様のセイTシャツ二枚、缶バッジ、アクリルキーホルダー、ハンドタオル、そしてもちろんパンフレット。
ロゴ入りのプラバッグはシワをつけないようクリアケースへ。Tシャツのうち一枚も保管用にケースへ入れる。ペンライトや缶バッジ、タオルは本棚の中央に並べ、アクリルキーホルダーにはアパートの鍵を付け替えた。
パンフレットを手に取り、今日の余韻に浸る夏來。ふと、天城セイラの怪訝そうな顔を思い出す。
「顔出しはしないって、どこかで読んだことあったけ。……もしかして、あたしがSNSで拡散するかもって警戒された? いやいや、しないって! デビュー当時からのファンだし、漫画化された『流星5』で推し活してることも、誰にも秘密なんだから」
ページをめくりながら、独り言は止まらない。
「それにしても、男性だったとはね。ずっと女性作家さんだと思ってたから……あのセイ君に加えて男の色気、しかもオーラがすごかった! まあ、現実であんな『生き物』と結婚する人なんているのかな?」
無意識に口ずさんでいたのは流星5の曲『流れ星を追いかけて』。ここ最近のお気に入りだ。
――偽った自分を捨てて
心の赴くままに
誰にも理解されなかった
今までの苦しい日々
全てを手放し
軽くなり
羽ばたいてゆく
夜空を横切る流れ星を
追いかけて――
そのとき突然、スマホが『流れ星を追いかけて』を無機質に繰り返した。胸が跳ねたが、画面を見た瞬間に、血の気が引いた。
「……最悪」
表示された名前――母。
さっきまでの幸福感は、跡形もなくかき消され、心臓をぐっと掴まれるような圧迫感が襲った。呼吸が浅くなる。
(ハァァ……どうして今なの。二度と関わりたくないのに。あたしはもう帰らない、絶対に――!)
逃げ出したい。
切り捨てたい。
でも完全に無視すれば、もっと面倒なことになるのはわかっていた。
重く冷たい手で、仕方なく通話ボタンを押した。
・レオ……メインボーカル担当(王道で華やか)
・カイ……ダンスエース担当(流れるような動き、海のように自由)
・リク……ラッパー=ブラックホール担当(ダークでクール)
・セイ……|作詞作曲担当(中性的なビジュアルと透明感)
・ユウ……リーダー&トーク担当(包容力があり、まとめ役)
作家・天城セイラは、このキャラクター『セイ』に自分自身を重ねていたのだ。
「なるほどね……高飛車女がラノベ推し活、ね……」
口角をいたずらっぽく上げた天城セイラ――その正体は、星川琉星、30歳だった。
映画館から感動と興奮に酔いしれながら帰宅した夏來は、ご機嫌でさっそく戦利品をベッドに並べた。
ハロウィン仕様のセイTシャツ二枚、缶バッジ、アクリルキーホルダー、ハンドタオル、そしてもちろんパンフレット。
ロゴ入りのプラバッグはシワをつけないようクリアケースへ。Tシャツのうち一枚も保管用にケースへ入れる。ペンライトや缶バッジ、タオルは本棚の中央に並べ、アクリルキーホルダーにはアパートの鍵を付け替えた。
パンフレットを手に取り、今日の余韻に浸る夏來。ふと、天城セイラの怪訝そうな顔を思い出す。
「顔出しはしないって、どこかで読んだことあったけ。……もしかして、あたしがSNSで拡散するかもって警戒された? いやいや、しないって! デビュー当時からのファンだし、漫画化された『流星5』で推し活してることも、誰にも秘密なんだから」
ページをめくりながら、独り言は止まらない。
「それにしても、男性だったとはね。ずっと女性作家さんだと思ってたから……あのセイ君に加えて男の色気、しかもオーラがすごかった! まあ、現実であんな『生き物』と結婚する人なんているのかな?」
無意識に口ずさんでいたのは流星5の曲『流れ星を追いかけて』。ここ最近のお気に入りだ。
――偽った自分を捨てて
心の赴くままに
誰にも理解されなかった
今までの苦しい日々
全てを手放し
軽くなり
羽ばたいてゆく
夜空を横切る流れ星を
追いかけて――
そのとき突然、スマホが『流れ星を追いかけて』を無機質に繰り返した。胸が跳ねたが、画面を見た瞬間に、血の気が引いた。
「……最悪」
表示された名前――母。
さっきまでの幸福感は、跡形もなくかき消され、心臓をぐっと掴まれるような圧迫感が襲った。呼吸が浅くなる。
(ハァァ……どうして今なの。二度と関わりたくないのに。あたしはもう帰らない、絶対に――!)
逃げ出したい。
切り捨てたい。
でも完全に無視すれば、もっと面倒なことになるのはわかっていた。
重く冷たい手で、仕方なく通話ボタンを押した。