残念令嬢、今世は魔法師になる
 このタルトはそれほど高いものではなく、庶民のあいだでも人気がある。
 そういえばカイラだった頃、この祭りが開催された日にこっそり屋敷を抜けだしてこれを食べた記憶があるんだよね。

 あれはそう、17歳のときだった。
 たしか家でガーデンパーティが開かれていたのだけれど、私はそれに出席させてもらえなかった。両親は貴族学院で優秀な妹だけを娘として招待客に紹介し、私には部屋から出ないように命じた。

 まあ、普段から外出をしないからそれほど苦ではなかったけれど、にぎやかな庭園での茶会を窓から眺めていたらふいに胸が苦しくなって、たまらなくなって、私はこっそり家を抜けだした。

 そして、ひとりでこの祭りを見に来たんだったわ。
 それも結局、ひどい目に遭ってしまってろくな思い出ではないんだけど。

 誰かと祭りを楽しむことができるなんて幸せ。
 それもこんなに優しくて素敵な両親と一緒に。

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