残念令嬢、今世は魔法師になる
 この魔道具は13歳の頃に魔塔の禁書庫で見つけた古い魔術書を見て作ったもの。
 魔道具にしては異質な妙な構造だったが、どうしても作ってみたかった。
 ただ、それが禁忌だと知ったのは完成してからだった。
 作成直後に意識を失い、数日眠り続けた。
 魔塔の責任者でもある俺の師匠が助けてくれた。
 そのときに彼が言った。

 ――その魔道具には、魂を縛る呪いがある。
 ――お前の命は、すでにそこにある。
 ――外せば死ぬ。

 それ以来、俺はこの魔道具をスカーフで隠し、誰の目にも触れさせていない。
 なぜ彼女が同じものを持っている?
 説明のつかないことが多すぎる。

 彼女の魔道具に触れた瞬間、知らない記憶が頭に飛びこんできた。
 古い屋敷の中の、湿った部屋。ぼろ布のような服を着た、黒髪で色白の痩せこけた女だ。
 年齢は50代ほど。死相を帯びたその目はたしかに俺を見ていた。
 だが、知らない。俺はあの場所に行ったこともないし、あの女を見たこともない。

 あれは、誰だ――?

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