囚われの聖女は俺様騎士団長に寵愛される
 どのくらい馬の背中に乗っていたんだろう。
 彼と数人の騎士たちと共に彼の屋敷へと向かっていた。
 他の騎士もいるためか、彼は私の事情をありがたいことに聞いて来なかった。

「おかえりなさいませ。カートレット様」

 屋敷に着くと、メイド長と数人のメイドが出迎えてくれた。

「帰った。変わりないか?」

「はい」

 ペコっと頭を下げる使用人たち。

「悪いが、こちらのレディを風呂に入れてやってくれないか。事情がある。その後、彼女に食事を摂らせてくれ」

 やっぱり汚いと思われていたのかしら。
 今更だけれど、申し訳なく思えてきた。

「かしこまりました」

「では、またあとで」

 彼は私にそう告げると、屋敷の玄関とは違う方向へ歩いて行った。
 どこに行くんだろう。




「あのっ!私、一人でできます!」

 私を出迎えてくれたのは手厚い歓迎だった。
 お風呂くらい自分で入れるのに。

「そうはいきません。ご主人様からお預かりをした大切なレディですから」

 メイドたちに囲まれて入る久しぶりのお風呂。
 気持ち良かったけれど、精神的には休まらない。

「あの、このドレスは?」

「そちらはご主人様のお母様の遺品です。申し訳ないことに、お客様用のドレスがなかったので、ご主人様のご命令により、そちらのドレスを着ていただくことになりました」

 遺品ってことは、カートレット様のお母様は亡くなっているのね。
 そんな大切なドレス、私が着てもいいのかしら。

「さあ、髪の毛を整えましょう」

 メイド長の指示に従うまま、お人形のように着こなされた私は、食事に案内された。

「え、あのっ。こんなご馳走、私には勿体ないです」

 サラダ、スープ、お魚にお肉、焼き立てのパンにフルーツが並んでいる。

「ご主人様のご命令ですので」

 ご命令って。
 何度も断わっても返答は「ご命令です」の一点だった。
 ここではカーレット様の命令は絶対なんだわ。
 使用人だから当たり前なのかもしれないけれど。

「食事が終わりましたら、ご主人様のお部屋へご案内いたします」

「あの、カートレット様はもうお食事は済んだのでしょうか?」

「はい。お嬢様が入浴されている間に召し上がっていただきました」

 お屋敷とは違う方向へ歩いて行ったのに、もう帰ってきているんだ。
 
 メイド長へ案内され、カートレット様の部屋へ向かう。

<トントントン>とノックをし、メイド長が声をかけると
「入れ」
 中から声が聞こえた。

「失礼いたします。お嬢様をお連れしました」

 メイド長の後ろから部屋に入ると、カートレット様の姿が見えた。
 イスに座り、何か書きものをしていた様子だった。

 私を見て立ち上がり、目を見開いている。

「綺麗だ……」

「はいっ?」

 綺麗って言ってくれた?

「まぁ、珍しいですね」

 メイド長が呟くと、コホンと咳払いし「下がって良い」と声をかけた。

 ペコっと頭を下げ、メイド長(彼女)は部屋から出て行った。
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