寡黙な消防士は秘密の娘ごと、復讐を終えた妻を溺愛する
「俺がぱぱだったらいいって、思ってくれているんだな」
「うん! だっておじしゃん、ヒーローみたいでかっこいいもん!」

 夏希は「こんなにすてきな新しいぱぱができたら、みんなに自慢できる」とキラキラと瞳を輝かせて言った。
 彼が本当の父親だとは、考えていないようだ。

「言い逃れできるって、ほんとに思ってるのか」

 それにほっとしたのは一瞬だ。
 すぐさま現実から目を背けるなと言わんばかりに、こちらを非難する声が聞こえて来る。
 片平さんはこちらに向かって、片手を差し出した。

「荷物、重いだろ。持つよ」
「何言ってるの? このくらい、平気……」
「わー! おじしゃん、力持ちー!」
「夏希を返して」
「嫌だ。夏希ちゃん。自分の家、どこだかわかるか」
「んーとね、こっち!」
「行くぞ」
「ちょっと!」

 私がどんなに異を唱えても、あの人は絶対に夏希を離さなかった。
 彼は強引に荷物を奪い取ると、嫌がる自分を無視して母娘の住むマンションまで着いてきた。
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