寡黙な消防士は秘密の娘ごと、復讐を終えた妻を溺愛する
「おかしい、よね」
武彦さんと再会して夫婦になってから、私の中である心境の変化が訪れた。
離れていた時は、いつだってお父さんが亡くなった事故のことばかりが頭を支配していたのに――彼と生活するようになってからは、一切思い浮かばなくなったのだ。
「あんなにも、憎んでいたのに……」
父親が大好きで仕方がないと毎日たくさん笑う夏希の姿や、夫の姿を見ていたら――なぜだか、この生活が当たり前になりつつある。
それが不思議で堪らない。
「愛おしいなんて、穏やかな日々を守りたいなんて、思ってはいけないはずなのに……」
夏希と楽しそうに会話をする武彦さんの姿を見ていたら、子どもを連れて再び姿を晦まそうと言う気にはなれなかった。
――明らかに、絆されている。
彼を再び愛するようになるのも、そう遠くない。
そんな予感に、苛立ちが募った。
「私は一体なんのために、あなたから逃げたんだろう……」
ぽつりと呟いた独り言は、誰にも聞かれることなく虚空に消えるはずだった。
しかし――。
恐らく、彼の髪を撫でつけたのがよくなかったのだろう。
夫の唇が開き、満足そうな声が聞こえてくる。
武彦さんと再会して夫婦になってから、私の中である心境の変化が訪れた。
離れていた時は、いつだってお父さんが亡くなった事故のことばかりが頭を支配していたのに――彼と生活するようになってからは、一切思い浮かばなくなったのだ。
「あんなにも、憎んでいたのに……」
父親が大好きで仕方がないと毎日たくさん笑う夏希の姿や、夫の姿を見ていたら――なぜだか、この生活が当たり前になりつつある。
それが不思議で堪らない。
「愛おしいなんて、穏やかな日々を守りたいなんて、思ってはいけないはずなのに……」
夏希と楽しそうに会話をする武彦さんの姿を見ていたら、子どもを連れて再び姿を晦まそうと言う気にはなれなかった。
――明らかに、絆されている。
彼を再び愛するようになるのも、そう遠くない。
そんな予感に、苛立ちが募った。
「私は一体なんのために、あなたから逃げたんだろう……」
ぽつりと呟いた独り言は、誰にも聞かれることなく虚空に消えるはずだった。
しかし――。
恐らく、彼の髪を撫でつけたのがよくなかったのだろう。
夫の唇が開き、満足そうな声が聞こえてくる。