寡黙な消防士は秘密の娘ごと、復讐を終えた妻を溺愛する
「俺は夏希だけではなく、希美ちゃんのことも愛おしくて仕方がないんだ。それを、君にも知ってほしい」
「そんなの、今さら言われなくたって……」
「いや。わかってないな。だから、ふとした瞬間に本音がこぼれ落ちてしまう」

 武彦さんは顔を上げてこちらを見つめる。
 その瞳の奥底に熱を灯した彼は、私の身体に唇を寄せた。

「好きだ」
「ちょ、ちょっと……」
「愛している」
「待っ……」
「言葉だけでは足りないなら、身体に刻み込んでやる」
「武彦さん!」

 身を捩って嫌がるが、鍛え抜かれた身体はどれほど抵抗を続けてもびくともしない。
 私が批難するように強く名を呼んで涙目で睨みつけてやれば、夫はまるで大輪の花が綻ぶかのような優しい笑みを浮かべる。

「ああ。やっと、目が合ったな」

 その後、目を見開いて驚く私の唇を奪う。

『ねぇ、お父さん。私と片平さんが付き合うことになったら、怒る?』

 脳裏には、6年前の事件直前に父親と交わした会話が再生されていた。

『武彦くんなら、安心して任せられるな』

 大好きで大切だった人が、唯一交際を認めてくれた男性。
 それが彼だったことを思い出し、素直にその口づけを受け入れた。
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