寡黙な消防士は秘密の娘ごと、復讐を終えた妻を溺愛する
 ――もしもお父さんが天国でこの光景を見ているのなら、愛し合う私たちのことを見守ってくれていると信じたかったから……。

「抵抗しないのであれば、俺の妻として歩む覚悟ができたと受け取るが……。希美ちゃんは、本当にそれでいいのか」

 武彦さんに対する憎悪でいっぱいの自分であれば、「そんなわけがない」と怒鳴り散らしていたところだ。
 しかし、彼の真っ直ぐな愛と生前の父親が口にした言葉を思い出した私は、いつの間にか夫に対する憎悪が再び恋心に変化し始めている自分に気づき、愕然としていた。

 ――憎み続けなければ、いけないはずだった。
 幸せな気持ちでいっぱいになってはいけないはずだった。
 だって彼がいなければ、お父さんは死ぬ必要なんてなかったのだから。
 なのに――どうして私は、彼と交わした口づけを喜んでいるの? 

「本当の気持ちを、教えてほしい」

 真っ直ぐな目が、こちらをじっと見つめている。
 その視線に、嘘や偽りの感情を窺い知ることはできなかった。
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