寡黙な消防士は秘密の娘ごと、復讐を終えた妻を溺愛する
 子どもがいたらできない話をさせようと、気を利かせてくれたのだろう。
 二人の間には、何度目かわからぬ気まずい沈黙が降りる。

「俺と結婚するんじゃなかったと、いつまで経っても浮かない顔をしている。そんな君を見るのは、つらい」
「珍しいね。武彦さんがそんなに饒舌だなんて」
「言葉にしなければ、いつまで経っても伝わらないこともあるだろう」

 彼は心外だと言わんばかりに眉を伏せると、険しい表情のまま声を発した。

「俺は何を言われても、構わん。思い切って、心の奥底をすべて曝け出してみないか」
「後悔するよ」
「しない。本心を隠されているほうが、よほど不愉快だ」

 武彦さんは、いつだってこうだ。
 私がどんなに不愉快な言葉を並べ立てたとしても、優しく受け入れてくれる。
 それが何よりもありがたいと思うと同時に――申し訳なさでいっぱいになってしまう。
 今まではそれが嫌で、言いたくなかった。
 だけど今は、そうも言っていられなくなった。
 だから……私は渋々、語り出す。
 己の内に秘めたる本心を……。
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