寡黙な消防士は秘密の娘ごと、復讐を終えた妻を溺愛する
 大好きなお父さんが心の底からかわいがる部下。
 お酒にすごく弱いくせに、泥酔している時も暴れることはなかった。
 普段は口数が少ないくせに、私の前では饒舌で、よく口元だけを綻ばせる不敵な笑みを浮かべていた。
 私なんかが時折大人の余裕を垣間見せる彼には釣り合わないって、自分でもよくわかっている。
 なのにどうして夫は、私を好きになってくれたのだろう? 

「武彦さんが会いに来てくれなかったら、あの子が仲間外れになっていたことも、気づけなかったんだよ? 母親失格なのに……。どうしてそんなに、優しくしてくれるの……?」
「希美ちゃんが、好きだから。それでは、理由にならないか」

 私はこくりと頷き、震える声を発する。
 彼の好意を無下にするような、酷い言葉を……。

「あなたの愛が、信じられない」
「俺は想い続ければ、いつかは相思相愛になれると信じている」

 しかし夫は、今は無理でもいつかは願いが叶うはずだと力説して見せた。
 真剣な表情でこちらを見つめる武彦さんの姿を見ていたら、こうやって気を張っているのが馬鹿らしくなる。
 私は苦笑いを浮かべながら、呆れたように言葉を紡いだ。
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