呪われし復讐の王女は末永く幸せに闇堕ちします~毒花の王女は翳りに咲く~

第22話 決闘の掟、国の頂点に立つ者となるために

 角や鱗を持つ竜や、魚のエラのような特徴のある耳の者、兎と思われる長い獣の耳を持つ者……と、その種も様々。
 その上、四、五歳と思われる幼子から十歳程度の少年少女と、年齢層もバラバラだ。そんな子どもたちに、ベルティーナとミランは瞬く間に囲まれてしまった。

「ミラン兄ぃちゃん、遊ぼうぜー!」
「とーっても良い匂いがたくさんする! お菓子だ、お菓子だ!」
「わー! 綺麗なお姉さん! すごいすごい! お姫様みたい! ドレス可愛いの!」
「ねえねえ、お姉さん、抱っこして!」

 まるで小鳥が一斉に囀るかのよう。子どもたちがどっと同時に話しかけるので、ベルティーナはたちまち目眩を覚えてしまった。

 イーリスとロートスもまだ子どもの部類に入るだろうが、彼女らが落ちついて見えてしまうほど。彼らの方がずっと幼いだろう。
 当然、ベルティーナは子どもなんて相手にしたことがない。子どもたちが次々と発する自由気ままな言葉にベルティーナが困窮し、こめかみを押さえたそのとき──

「おいおい……お前ら、一気に話しかけると困るじゃねえか。大人しくできねえと、貰ってきた菓子をやらねえぞ」

 ミランがやれやれと言葉を挟むと、子どもたちは皆ぴたりと黙った後、元気よく返事した。

「そうですよ。お客様が来たらどうするか、教えましたよね? さあ、どうするんです?」

 続けてマルテが言うと、子どもたちは「お行儀良くします!」と口々に言い、(きびす)を返してすたすたと部屋に入っていった。

「さあさ、玄関で立ち話もいかがなものかと思いますからね。少しばかり散らかっていますが、どうぞ、お家に入ってください」

 マルテはベルティーナに優しい笑みを向けて言うが、ミランはすぐに首を振った。

「いや。今は荷物を軽くするのを手伝って欲しくて来たようなもんだ。街を歩いて食い物をたくさん貰ったからな。さすがにこんなに食い切れないし要らない。多分、菓子類ばかりだろうし。チビどものおやつにしてやってくれ」

 そう言うなり、ミランは両手を塞いでいた紙袋をマルテに手渡した。

「あら、そうなの、残念ね。ミランちゃんは番人さんだもの。やっぱり忙しいのかしら」
「別に。今日は暇を取ったからそうでもないが……まあ、せっかくだから二人で出かけようって約束しただけで」

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