呪われし復讐の王女は末永く幸せに闇堕ちします~毒花の王女は翳りに咲く~
 言われた言葉にベルティーナの思考が追いつかなくなり、完全に停止した。いや、言っていることは分かるが、さすがにあれこれと過激すぎるのだ。
 それでも、つい最近、前例があっただろう。あのイノシシ牙の男が王位継承の話をしていた気もするもので……。

「つまり、結婚までに時間がかかるというのは……」
「そういうこと。俺の決闘繁忙期ってこと。でも、思ったより忙しくないけどな」

 そりゃ、番人の長に就くほどの男だ。誰も勝ち目がないと想像がつきやすい。ベルティーナはこめかみを揉んで情報を整理した。

 ……つまり、即位の儀という場で彼は自分の母親と戦うのだと。それで負ければ王城追放と。

「貴方、ヴァネッサ女王と戦うの?」
「ああ、そうだが」
「こう聞いたら失礼だけど、女王のご年齢はおいくつで……?」
「……五十ほどだな」
「……年齢や性別を考慮すると、貴方、あまりに有利すぎるでしょう」

 きっぱりとベルティーナが言うと、ミランは即座に首を振った。

「王に就くほどだ。俺の母親は強い。正直、この国一番の俺の強敵だと言って過言じゃない。ついでに言うと、俺の父親は母親に負かされた雄竜だ。一応、現在三位。前代の翳の番人。まあ、俺が番人になったの、割と最近で……父親を倒して踏襲したもんで……」
「貴方、父親とも戦っていたのね……」
「まあな。一応は女王の夫だからこそ王城にいる権利もあるもんだが……どうにもこうにも意固地な父親でな。王城の外で一般人に混じって生活している」

 本気で頭が追いつかなかった。即位式と言ったら……本で描かれたような厳粛な場で祝典を行うものだと思っていたもので……。

「貴方、結構大変なのね。でも負けた場合は王城追放でしょう? そうなったらどうするの。私もだけど……」

 思ったままの言葉を投げかけると、ミランはまた苦笑いをこぼした。

「……そうさせないために、負けるわけにはいかない。だから命を賭けてでも頑張るしかないな? むしろ、勝たなきゃ俺としても困る」

 ミランがそう言ってから間もなくだった。ちょうど菩提樹(ぼだいじゅ)の林を抜け、視界は鮮明になった。
 
 その眼下にあった景色……瞳に映したベルティーナは、返事さえ忘れて息を呑んだ。
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