呪われし復讐の王女は末永く幸せに闇堕ちします~毒花の王女は翳りに咲く~
「どうって……。どうもこうも、俺は大して何も思ってないが。戦は決闘に似てるだろうが、殺すまでするのは理解できないな。だから、深く関わるとろくでもないだろうから二歩、三歩退いてるだけ。何だろう、俺たちはは俺たち、あっちはあっち。別に好きにすりゃいいんじゃねえのって程度で」
「随分適当ね……」

 ベルティーナが目を細めて言うと、ミランはくすくすと笑みをこぼした。

「まあ、そういうもんだしな。双方の決定的な違いは、俺たちは物事を複雑に考えず、原初的で大雑把なんだろうな。そりゃ実害を与えられりゃ恨めしいとか思うこともあるもんだが、そっくりな複製世界を真裏に作って、文化を取り入れている時点で尊敬している部分も事実上あるんだと思う」
「なるほどね。だけど正直、尊敬するようなものでもないとは思うわ……」

 さっぱりと言ってベルティーナが目を細めると、ミランはすぐに首を振った。

「いいや。まず、俺たちが本来の姿じゃなくて、決闘時以外は魔力を少し抑えた半人の姿で過ごしているのは、人と共存しようとしていた過去の歴史があるからだと思う。人間に憧れを持たなきゃ、服を着てこんな姿で生活しないだろうしな」

 そう言い終えると、ミランはシュネーバルの入った袋を砂上に置いた。そうして、腰を下ろして長靴と靴下を脱ぎ始め……。

「……何をしているの?」

 いきなりの行動を不可解に思ってベルティーナが思わず()くと、彼は首を傾けた。

「何って。せっかく海に来たのに、あんまり難しい話を続けてもな。ベル、海初めてだろ? 靴を脱いで裸足になったらどうだ? まあ、もう夏だし大丈夫だろ。それでも多分少し冷たいとは思うが、海の水に触れてみろよ?」

 長靴を脱いだミランは立ち上がり、波打ち際に歩み始めた。

 しかし、殿方の前で裸足を晒すと……。
 もはや片方の大腿を大胆に露出している時点ではしたない云々は今さらではあるが、それでもわずかに抵抗がある。それに、風呂でもない場所で水に足をつけたような経験もないもので……。

「どうした? もしかして怖いのか?」

 そんな言葉をミランに投げかけられ、ベルティーナはむっとして彼を睨んだ。

「そんなわけないじゃない」

 臆病者にされた気がして少し腹が立った。ベルティーナは鼻を鳴らし、躊躇いながらも靴とガータリングに吊されたストッキングを脱いだ。
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