呪われし復讐の王女は末永く幸せに闇堕ちします~毒花の王女は翳りに咲く~
誰一人として廊下を歩んでいないのは、とても新鮮に思えて、ベルティーナは少し興味深げに辺りを見渡して歩いたが、自力で昇降機を動かせないことをすぐに思い出して眉を寄せた。
ベルティーナの内に秘めた魔力は、年々高まっていると囁かれていた。確かに今、自身が魔性の者に近づきつつあることを肌で感じていた。
だが、その魔力を外に放つことはできず、昇降機を動かすことすらままならない。
仕方なく階段へと向かうが、扉に触れた瞬間、就寝中の安全のための硬い施錠に阻まれる。
ベルティーナは思わず眉を寄せ、亜麻色の髪を指で軽くかき上げた。
(……私、今日は本当に何だか抜けているわ。寝起きだからかしら?)
困ったものだと呟き、眉間を軽く揉む彼女の瞳には、冷たいアイスブルーの奥に苛立ちと一抹の自嘲が揺れていた。
「何やってんだ、ベル……こんな真っ昼間に」
後ろから聞き慣れた低い声が響き、ベルティーナがぱっと後ろを向くと、そこには案の定ミランが立っていた。
彼は寝間着の簡素な服装のまま。眠たげな瞼を擦って、ベルティーナの方を見つめていた。
「風がうるさくて眠れないから、早起きして庭の様子でも見に行こうとしただけよ。だけど……」
「階段の扉が施錠されてるし、自力で昇降機が動かせないって思い出したって?」
眠そうでありながらも、ミランは言わんとしていることを的確に言う。ベルティーナが素直に頷くと、彼はやれやれと首を振った。
「この風だ。外に出てもろくに作業にもならんと思う。やめておいた方がいいと思うが……」
「作業するかどうかさておき、苗もだいぶ育って丈が大きくなってるの。支柱も立てていないから、風で倒れてないかと思って。様子を見に行こうとしただけよ。そんなに言うなら出ないけれど……眠れないのよ」
少しふてくされてベルティーナが言うと、ミランはわずかに唇を綻ばせて笑った。
「しょうがないな。ついていくから少し待ってろ……」
そう言うなり、彼は颯爽と踵を返して部屋に戻っていった。
それからしばらく。戻ってきたミランは、普段通りの装いに着替えて姿を現した。しかし、まだ髪がはねている。その様子が何だか滑稽で、ベルティーナは笑みつつ背伸びして、彼の乱れた髪を手櫛で整えた。
「別に昇降機を動かせればいいのよ……」
ベルティーナの内に秘めた魔力は、年々高まっていると囁かれていた。確かに今、自身が魔性の者に近づきつつあることを肌で感じていた。
だが、その魔力を外に放つことはできず、昇降機を動かすことすらままならない。
仕方なく階段へと向かうが、扉に触れた瞬間、就寝中の安全のための硬い施錠に阻まれる。
ベルティーナは思わず眉を寄せ、亜麻色の髪を指で軽くかき上げた。
(……私、今日は本当に何だか抜けているわ。寝起きだからかしら?)
困ったものだと呟き、眉間を軽く揉む彼女の瞳には、冷たいアイスブルーの奥に苛立ちと一抹の自嘲が揺れていた。
「何やってんだ、ベル……こんな真っ昼間に」
後ろから聞き慣れた低い声が響き、ベルティーナがぱっと後ろを向くと、そこには案の定ミランが立っていた。
彼は寝間着の簡素な服装のまま。眠たげな瞼を擦って、ベルティーナの方を見つめていた。
「風がうるさくて眠れないから、早起きして庭の様子でも見に行こうとしただけよ。だけど……」
「階段の扉が施錠されてるし、自力で昇降機が動かせないって思い出したって?」
眠そうでありながらも、ミランは言わんとしていることを的確に言う。ベルティーナが素直に頷くと、彼はやれやれと首を振った。
「この風だ。外に出てもろくに作業にもならんと思う。やめておいた方がいいと思うが……」
「作業するかどうかさておき、苗もだいぶ育って丈が大きくなってるの。支柱も立てていないから、風で倒れてないかと思って。様子を見に行こうとしただけよ。そんなに言うなら出ないけれど……眠れないのよ」
少しふてくされてベルティーナが言うと、ミランはわずかに唇を綻ばせて笑った。
「しょうがないな。ついていくから少し待ってろ……」
そう言うなり、彼は颯爽と踵を返して部屋に戻っていった。
それからしばらく。戻ってきたミランは、普段通りの装いに着替えて姿を現した。しかし、まだ髪がはねている。その様子が何だか滑稽で、ベルティーナは笑みつつ背伸びして、彼の乱れた髪を手櫛で整えた。
「別に昇降機を動かせればいいのよ……」