呪われし復讐の王女は末永く幸せに闇堕ちします~毒花の王女は翳りに咲く~
さすがに、こんなことのために彼まで起きる必要もないだろうに。そう思いつつ、ベルティーナが眉をひそめると、ミランはすぐに首を振った。
「そうはいかない。俺の立場として、さすがに白昼に婚約者を一人で外に出すのはどうかと思うからな。一応、俺の部屋にリーヌに書き置きを残したし……まあ、大丈夫だろ」
「晩に仕事は?」
さっぱりとベルティーナが訊くと、「あるけど夜半過ぎからだし、支障はない」なんて彼はあっさりと返した。
ならば好意に甘えてもいいだろうか……。そう思いつつ、二人は昇降機に乗り、庭園へと向かった。
しかし、案の定、外は猛烈な風だった。
下から吹き上げる風に、スカートの裾が捲れ上がりそうになる。ベルティーナがスカートを押さえつつ、おぼつかない足取りで歩んでいると、ミランはじとりと目を細めてベルティーナを一瞥した。
「やっぱり部屋に戻れば……あわよくば俺の部屋で二度寝してけば」
「は? 嫌よ」
言われた言葉に、ベルティーナは半眼になって即答する。
「ベル。即答されると、さすがに傷つく……」なんて彼はこぼすものだが、ベルティーナは目を細めたままそっぽを向いた。
「どうせ結婚したら俺の部屋が寝室になるから、同じベッドで寝ることになるがな。だから、俺に抱き枕にされる予行演習して慣れた方がいいんじゃねえの……」
続けざまにミランに言われ、ベルティーナはさらに目を細めた。否、細めすぎて、もうほぼ目が開いていない。
抱き枕に……。つまり、彼に羽交い締めにされて眠ることになるのだと。
自分たちは婚約者の間柄。いずれ夫婦になったときには同じ部屋で生活し、同じ部屋で過ごすことになるものだと理解していたが……。そこまで深く想像したことがなかった。
しかし、想像しなければ良かったと、ベルティーナはすぐに思った。
夫婦が一緒に寝る……つまり、ただ寝るだけではないとは分かる。何せ、相手は〝匂いが堪らない〟などと獣の雄みたいな発言をする相手だ。
当然のように、そういう気はあるのだと分かっている。
──ああ、考えなければ良かったわ。
脳裏に途方もなく浅ましい想像が抜けきれず、ベルティーナは顔を真っ赤に染めて俯いてしまったそのときだった。
「想像したの?」
「そうはいかない。俺の立場として、さすがに白昼に婚約者を一人で外に出すのはどうかと思うからな。一応、俺の部屋にリーヌに書き置きを残したし……まあ、大丈夫だろ」
「晩に仕事は?」
さっぱりとベルティーナが訊くと、「あるけど夜半過ぎからだし、支障はない」なんて彼はあっさりと返した。
ならば好意に甘えてもいいだろうか……。そう思いつつ、二人は昇降機に乗り、庭園へと向かった。
しかし、案の定、外は猛烈な風だった。
下から吹き上げる風に、スカートの裾が捲れ上がりそうになる。ベルティーナがスカートを押さえつつ、おぼつかない足取りで歩んでいると、ミランはじとりと目を細めてベルティーナを一瞥した。
「やっぱり部屋に戻れば……あわよくば俺の部屋で二度寝してけば」
「は? 嫌よ」
言われた言葉に、ベルティーナは半眼になって即答する。
「ベル。即答されると、さすがに傷つく……」なんて彼はこぼすものだが、ベルティーナは目を細めたままそっぽを向いた。
「どうせ結婚したら俺の部屋が寝室になるから、同じベッドで寝ることになるがな。だから、俺に抱き枕にされる予行演習して慣れた方がいいんじゃねえの……」
続けざまにミランに言われ、ベルティーナはさらに目を細めた。否、細めすぎて、もうほぼ目が開いていない。
抱き枕に……。つまり、彼に羽交い締めにされて眠ることになるのだと。
自分たちは婚約者の間柄。いずれ夫婦になったときには同じ部屋で生活し、同じ部屋で過ごすことになるものだと理解していたが……。そこまで深く想像したことがなかった。
しかし、想像しなければ良かったと、ベルティーナはすぐに思った。
夫婦が一緒に寝る……つまり、ただ寝るだけではないとは分かる。何せ、相手は〝匂いが堪らない〟などと獣の雄みたいな発言をする相手だ。
当然のように、そういう気はあるのだと分かっている。
──ああ、考えなければ良かったわ。
脳裏に途方もなく浅ましい想像が抜けきれず、ベルティーナは顔を真っ赤に染めて俯いてしまったそのときだった。
「想像したの?」