呪われし復讐の王女は末永く幸せに闇堕ちします~毒花の王女は翳りに咲く~
 同種のリーヌでさえこれだ。〝さっきのベル、目も口もなかったから〟だなんてミランは笑っていたが、彼だって相当だっただろう。
 いや、平衡感覚さえ失わずに歩くことができたことに逆に驚いてしまい、彼の尋常ではない逞しさをベルティーナは改めて悟った。

「ミランは……」
「森林火災を悟ったみたいで、負傷者がいれば救助に行くと……」

 東屋の方を見上げると、ちょうど黒い竜──ミランが飛んでいく様子が目に映った。

「やっぱり……間違いじゃなかった。正面塔の見張りが南西部の森で煙が上がっているなんて伝えがあって」

 リーヌがいよいよ瞼を伏せて告げたそのときだった。
 ごうと低い咆哮が次々に轟き、空を見上げると、燦々とした青空の中、大きさも姿形もバラバラな竜たちが、ミランの向かった方向へ飛び立っていった。

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