呪われし復讐の王女は末永く幸せに闇堕ちします~毒花の王女は翳りに咲く~
「もう充分のはず。私を認めなさい、早く私を……ここから」

 ──出しなさい? と、自分でも苛立つほどの上から目線の命令を言われたそのとき、足首を何かに掴まれたような感覚がしたのだ。

 はっと視線を下げると、自分の足首には夥しい蔓草が絡みついていた。

 やがて、何かを引きずるように近づく音が聞こえてくる。ベルティーナは戦慄しながらも目をやると、そこには薄紫の釣り上がった双眸(そうぼう)が光っていた。だが、その光る目の明るさで自分を捕らえたものがはっきりと見えてしまった。

 それは何とも形容しがたい怪物だった。ミランたちの竜にも見えるが、体に毒々しい花を咲かせ、背から夥しい蔓草を生やす恐ろしい姿だったのだから……。

「早く、早くしてちょうだい……私をさっさと、ここから出しなさいよ?」

 そう告げるなり、怪物は甲高い咆哮を上げてベルティーナに牙を剥いた。

「きゃああああああ!」

 今まで悲鳴なんて出したこともない。あまりの恐怖にベルティーナは戦慄き、その場でへたりと座り込んだ。

 途端に脳裏に駆け巡るのは、まるで呪いのような言葉の数々だった。

 ……ベルティーナ、貴女は飛んだ腑抜けね。
 何を甘い夢なんて見ているの? 貴女は永遠に独りよ。貴女なんか誰も愛さない。その感情は偽りよ。幸せなんて望むなんて馬鹿らしい。忘れたなんて言わせないわ。復讐こそがあんたの生きる意味でしょう? 憎悪を忘れて幸せなんて望むの?
 貴女、ヴェルメブルグを許せるの? 私は許せない。絶対に……許さない。

 それも自分の声で言われているのだ。ベルティーナは錯乱し、髪を掻き乱し震え上がった。

「違う、違うわ! 確かにそうだけど、そう思うけれど違う! 私は……私は……もう」

 ──そんなのどうだっていい。そんなことをすればこの国だって滅びを辿る。未来を紡がなければならない。
 真実の言葉を出そうとするものだが、それはすぐに遮られる。

「馬鹿ね。貴女は死ぬまで独りぼっち。可哀想な王女に変わりないのよ? 一石二鳥じゃない。自分を惨めな目に遭わせたこの国だって滅ぼしてしまえばいいのよ?」

 ──だから、早く私を認めなさい。
 と、耳元で子馬鹿にしたように言われ、ベルティーナは首を振った。

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