呪われし復讐の王女は末永く幸せに闇堕ちします~毒花の王女は翳りに咲く~
「やめてちょうだい。そんなこと……そんな風に、私はもう思っていない! もう何も言わないで!」
ベルティーナは身を縮め、きつく瞼を閉ざした。その瞬間だった。
また別の誰かが自分を呼んでいる声が聞こえてきたのだ。
「……ベル、…………ベルティーナ?」
──起きろ。
と鮮明に聞こえた途端、視界はぱっと明るくなった。
ベルティーナは何度も瞬きをして辺りを見渡した。
そこは、紛れもなく自分の部屋。空は明るく、燦々とした夏の日差しが窓辺から射していた。
「……おい……大丈夫か?」
聞き慣れた低く平らな声で言われ、妙な安堵を感じた途端、ベルティーナの瞳には分厚い水膜が張った。
あれは、何だったのだろう。そうは思うが、あれこそが、自分の中に存在する汚い自分であり自己幻視……とすぐに理解した。
(あれを認めろと……? あれが私……?)
放心したままのベルティーナが、心で呟いたそのときだった。感じたことのないほどの孤独感と焦燥感が込み上げ、ベルティーナは手で顔を覆って慟哭した。
「おい、しっかりしろ! ベル、ベル!」
やんわりと腕を掴まれ、視界を覆っていた手がはがれる。涙で揺れた視界の先に映るのは……自分の婚約者ミランの顔だった。
まるで幼子のように、彼に縋るようにベルティーナが彼を呼んだそのとき。温かな手が自分の手に絡んだ。
「怖い夢でも見たのか? ほら、目の前。いるよ、さっきから」
──気づけよ、なんて苦笑いをして、ベルティーナの頬に口づけを落とした。
こんな所作をされるのはとてつもなく恥ずかしいはずだが、それでも嫌な気がしない。……ベルティーナは自然と彼の首の裏に手を回し、自分の胸に彼を抱き寄せた。
「私を独りにしないで……独りはもう、嫌よ」
──独りは寂しい、悲しい。
真実の言葉は、十七年の孤独はすべて涙と共に流れ落ちていった。
小賢しいほどに聡明であるように──そう言われていたものだが、本当はいつだってとてつもなく寂しかった。
いない者とされたこと、自分の存在価値。結局何もかも見て見ぬふりで諦めて、取り繕って生きてきたのだ。それに改めて自分で気づいてしまったのだ。
「助けて……」
震えた声でベルティーナが告げ、さらに強くミランの頭を抱きかかえた。
ベルティーナは身を縮め、きつく瞼を閉ざした。その瞬間だった。
また別の誰かが自分を呼んでいる声が聞こえてきたのだ。
「……ベル、…………ベルティーナ?」
──起きろ。
と鮮明に聞こえた途端、視界はぱっと明るくなった。
ベルティーナは何度も瞬きをして辺りを見渡した。
そこは、紛れもなく自分の部屋。空は明るく、燦々とした夏の日差しが窓辺から射していた。
「……おい……大丈夫か?」
聞き慣れた低く平らな声で言われ、妙な安堵を感じた途端、ベルティーナの瞳には分厚い水膜が張った。
あれは、何だったのだろう。そうは思うが、あれこそが、自分の中に存在する汚い自分であり自己幻視……とすぐに理解した。
(あれを認めろと……? あれが私……?)
放心したままのベルティーナが、心で呟いたそのときだった。感じたことのないほどの孤独感と焦燥感が込み上げ、ベルティーナは手で顔を覆って慟哭した。
「おい、しっかりしろ! ベル、ベル!」
やんわりと腕を掴まれ、視界を覆っていた手がはがれる。涙で揺れた視界の先に映るのは……自分の婚約者ミランの顔だった。
まるで幼子のように、彼に縋るようにベルティーナが彼を呼んだそのとき。温かな手が自分の手に絡んだ。
「怖い夢でも見たのか? ほら、目の前。いるよ、さっきから」
──気づけよ、なんて苦笑いをして、ベルティーナの頬に口づけを落とした。
こんな所作をされるのはとてつもなく恥ずかしいはずだが、それでも嫌な気がしない。……ベルティーナは自然と彼の首の裏に手を回し、自分の胸に彼を抱き寄せた。
「私を独りにしないで……独りはもう、嫌よ」
──独りは寂しい、悲しい。
真実の言葉は、十七年の孤独はすべて涙と共に流れ落ちていった。
小賢しいほどに聡明であるように──そう言われていたものだが、本当はいつだってとてつもなく寂しかった。
いない者とされたこと、自分の存在価値。結局何もかも見て見ぬふりで諦めて、取り繕って生きてきたのだ。それに改めて自分で気づいてしまったのだ。
「助けて……」
震えた声でベルティーナが告げ、さらに強くミランの頭を抱きかかえた。