呪われし復讐の王女は末永く幸せに闇堕ちします~毒花の王女は翳りに咲く~
 しかし、なぜ嬉しかったのか。それは、自分に向き合ってくれた存在──ミランだったからこそだと、ベルティーナは思った。

 だが、惹かれた部分はそれだけではない。彼は、身分を越えた友情や絆を大切にすることや、困っている人を放っておけない堅実さと優しさがある。
 そして何よりも責任感が強いことでもあるだろう。だからこそ、この人が婚約者で良かった。この人が自分の伴侶になると改めて知り、ベルティーナは安心していた。

 そう……きっと、自分はミランとならば上手くやっていけるだろうと思った。だから、自分も月の満ち欠けのように穏やかに変わり、彼の支えになれるような良き伴侶となりたいと、心の奥底で思うようになっただろう。

 考えれば考えるほどに、随分と心が凪いできた。
 やがて、思考はまた強い意志へと変わり、ベルティーナはナイトドレスの裾をぎゅっと強く握りしめた。

  ……彼に葬られるなんてあってはならない。自分で幸せは掴まなくてはならない。
 こんなにも強すぎる極端な思いを二つも背負う自分は貪欲すぎるだろうと思った。だからこそ、どちらか一つを選ばなくてはいけない。いや、自分がそれを認め、醜かろうが本当の自分を知ってもらわなくてはならない。

「そうね、好きよ。私はミランに惹かれていると思うわ」

 毅然としてベルティーナが告げると、彼女は「でしょうね」なんてほくそ笑んだ。
 しかし、今の自己幻視(ドッペルゲンガー)の反応で、ベルティーナは完全に冷静さを取り戻した。

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