呪われし復讐の王女は末永く幸せに闇堕ちします~毒花の王女は翳りに咲く~
「する。今まで通り、夜だけ出て行く。夜明けには帰るからいつもと同じ」
「貴方、これをヴァネッサ女王や近侍(きんじ)のリーヌに何て言うつもりよ……」

 ベルティーナが呆れて()くと、ミランは顎に手を当てて目を細めた。

「城ぶち壊したベルのお仕置きは俺が下すから、閉じ込めておいたって言う。ついでに蜜月予行演習とでも?」

 その言葉で確信に変わった。
 この罰の意図を読み解き、ベルティーナは顔を真っ赤に染めて口をぱくぱくと動かした。

「……ちょっと待って。貴方、即位はまだよね? 私たちは婚前よ? そんなの不潔だわ」

 慌ててベルティーナが言葉を挟むと、彼は眉を寄せた。

「それは、前にも言ったけど〝人間特有のしきたり〟だろ。魔性の者にはそれは……ない。それに、ベルはもう人間じゃないだろ?」

 きっぱりと言われてしまい、ベルティーナは言葉を失い、頬を真っ赤に染めた。

 確かにそうだろう。魔に墜ちたのだ。その証拠に自分の腰から突き出た茨の蔦が動揺に比例してうようよと蠢いているのだから……。

「さ、さすがにそれは……」

 ──不健全だと思う、と、言いたいが唇は空回りするばかりで言葉なんて出てこない。しかし、ミランが追い打ちをかけるのはすぐだった。

「なぁ、言ったよな? 二言はないって。ベルは自分の発言に責任は持てるよな?」

 ぞっとする程、甘い声。
 外耳を舐めるように甘やかに囁かれ、ベルティーナは震えながら、きつく瞼を閉ざした。

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