呪われし復讐の王女は末永く幸せに闇堕ちします~毒花の王女は翳りに咲く~
第33話 それはあまりに甘やかな罰 ※
※※※
薄暗い部屋の仄かな燭光の中、ベルティーナのラベンダー色の瞳は、まるで夜の湖に浮かぶ月光のように淡く輝いていた。
魔性の者は暗闇で目を光らせる──その事実が、彼女が魔に墜ちた証だと、ミランは今さらのように深く実感した。
だが、その瞳は水膜に覆われ、溺れるように潤み、どこか儚げに揺れている。
普段はどこか不機嫌そうな彼女の顔が、今は痛みと甘い苦しさに歪み、ぽってりとした唇から漏れる吐息は、蜜のように甘くミランの心を乱した。
「ベル、痛いなら、中断する……」
休もう、と彼女に覆いかぶさったミランは、彼女の亜麻色の髪を撫でて言ったが、ベルティーナは首を振った。
かと思えば──大きく開かれた足で、ミランの腰を抱き留めた。
「嫌よ、離れないで……うっ、嫌」
涙で潤った瞳を向けて、甘えた声で言われてしまえば、もう中断なんて選択はとてもできない。そこまで自分だって大人でもないと、ミランは自負していた。
──いつもツンとすました王女が、こんなにも無防備に、逃がさぬように絡みついてくるなんて。
その甘い拘束に、ミランの胸は熱く甘やかな疼きに満たされた。彼はベルティーナの涙が滲む眦にそっと口づけを落とし、優しく微笑んだ。
「うん。離れない、ベルのそばにずっといるよ」
──愛してる。
甘く囁き、そっと唇を重ねた。
最初は柔らかく、まるで壊れ物を扱うように触れた口づけは、次第に深く、貪るようなものへと変わり果てた。彼女の唇を甘く食み、舌を見つけて絡め、吸い上げるたびに、溺れるような陶酔がミランを包んだ。
すでにこうして繋がっているだけで、胸の奥は多幸感に震えている。だが、抑えきれぬ欲が限界を囁く。
「ベル、ごめん……動いていい?」
口づけから解放して訊くと、舌を出したままの彼女は恥じらいつつも頷いた。
──柔らかく弾む胸。自分の名を呼ぶ甘えたような嬌声。なにもかもが愛おしくて、欲情を駆り立ててたまらない。
何年も想い続けた王女がこの手の中にいる。そして自分の名を呼んでくれる。自分だけをこうも真っ直ぐに見つめてくれる。
今日この瞬間が、今が途方もなく幸せでたまらなかった。
***
そうして、甘やかな情事という〝罰〟ののち──彼女はすぐに眠ってしまった。
薄暗い部屋の仄かな燭光の中、ベルティーナのラベンダー色の瞳は、まるで夜の湖に浮かぶ月光のように淡く輝いていた。
魔性の者は暗闇で目を光らせる──その事実が、彼女が魔に墜ちた証だと、ミランは今さらのように深く実感した。
だが、その瞳は水膜に覆われ、溺れるように潤み、どこか儚げに揺れている。
普段はどこか不機嫌そうな彼女の顔が、今は痛みと甘い苦しさに歪み、ぽってりとした唇から漏れる吐息は、蜜のように甘くミランの心を乱した。
「ベル、痛いなら、中断する……」
休もう、と彼女に覆いかぶさったミランは、彼女の亜麻色の髪を撫でて言ったが、ベルティーナは首を振った。
かと思えば──大きく開かれた足で、ミランの腰を抱き留めた。
「嫌よ、離れないで……うっ、嫌」
涙で潤った瞳を向けて、甘えた声で言われてしまえば、もう中断なんて選択はとてもできない。そこまで自分だって大人でもないと、ミランは自負していた。
──いつもツンとすました王女が、こんなにも無防備に、逃がさぬように絡みついてくるなんて。
その甘い拘束に、ミランの胸は熱く甘やかな疼きに満たされた。彼はベルティーナの涙が滲む眦にそっと口づけを落とし、優しく微笑んだ。
「うん。離れない、ベルのそばにずっといるよ」
──愛してる。
甘く囁き、そっと唇を重ねた。
最初は柔らかく、まるで壊れ物を扱うように触れた口づけは、次第に深く、貪るようなものへと変わり果てた。彼女の唇を甘く食み、舌を見つけて絡め、吸い上げるたびに、溺れるような陶酔がミランを包んだ。
すでにこうして繋がっているだけで、胸の奥は多幸感に震えている。だが、抑えきれぬ欲が限界を囁く。
「ベル、ごめん……動いていい?」
口づけから解放して訊くと、舌を出したままの彼女は恥じらいつつも頷いた。
──柔らかく弾む胸。自分の名を呼ぶ甘えたような嬌声。なにもかもが愛おしくて、欲情を駆り立ててたまらない。
何年も想い続けた王女がこの手の中にいる。そして自分の名を呼んでくれる。自分だけをこうも真っ直ぐに見つめてくれる。
今日この瞬間が、今が途方もなく幸せでたまらなかった。
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そうして、甘やかな情事という〝罰〟ののち──彼女はすぐに眠ってしまった。