呪われし復讐の王女は末永く幸せに闇堕ちします~毒花の王女は翳りに咲く~
「いいから早く座りなさい! いくら呪われているとはいえ、隣に座ったからと言って取り憑いて喰ったりなんてできないわ。貴女、見るからにきっと私より年上でしょう?」
──情けない。
呆れ混じりに言い放つと、ハンナは素直にベルティーナの隣に腰掛けた。
「いいこと? 落ち着きなさい。さっきも言ったけれど、倒れられても迷惑よ」
尤もなことをベルティーナは小声でぴしゃりと言い放つ。
それでも、こうも苦しげな呼吸をする彼女が不憫に思えてしまい、ベルティーナは彼女の背をそっと撫でる。
自ら他人に触れるなど初めてだろう。我ながら何をしているのだろう……と思うが、さすがにこの状態を放っておけるはずがない。
「落ち着いたら言いなさいよ」
そう言って間もなく。ハンナは顔を上げ──ベルティーナを見つめると一言詫びて、ゆったりと話を切り出した。
「あの……私、ベルティーナ様の侍女として、翳りの国へお伴することになったのです……」
「あらそう? でも、私は侍女なんて頼んでいないわ。さっきも言ったわよね? 私は王女として育っていないのだから、大抵のことは一人でできるけれど」
──馬鹿にしてるのかしら。なんて鼻で笑うと、ハンナはすぐに首を振る。
「そういう命令なのです。つい先程、決まったばかりです。これに背けば私、処されるそうです」
処されるとはつまり、処刑だ。
その言葉を聞き、ベルティーナは無表情のままハンナを見据えた。
……果たしてどういった背景で、彼女まで翳りの国へ行かなければならなくなったのか。
同郷の者を一人侍らせた方が安心感もあるだろうとの気遣いか。しかし、得体の知れぬ異形の者たちの国へと連れて行かれるなど、完全に巻き添えだろう。運が悪すぎるとしか言いようもない。
そもそも、翳りの国は〝この世に存在しない〟異界。いわば、死者が向かうとされる冥界に近いもの。無論、人の住まう世界に容易く帰れるはずもない。
そう……無実の人間を、殺すようなものだ。
表情に出さずとも、ベルティーナは心の中で彼女の処遇を哀れんだ。
「私が直々に断るわ。これは私の婚姻のため。貴女にはまるで無関係なことでしょう? 詮ずる所、あの男の使用人が貴女の上役かしら?」
──侍女なんて要らないわ。
──情けない。
呆れ混じりに言い放つと、ハンナは素直にベルティーナの隣に腰掛けた。
「いいこと? 落ち着きなさい。さっきも言ったけれど、倒れられても迷惑よ」
尤もなことをベルティーナは小声でぴしゃりと言い放つ。
それでも、こうも苦しげな呼吸をする彼女が不憫に思えてしまい、ベルティーナは彼女の背をそっと撫でる。
自ら他人に触れるなど初めてだろう。我ながら何をしているのだろう……と思うが、さすがにこの状態を放っておけるはずがない。
「落ち着いたら言いなさいよ」
そう言って間もなく。ハンナは顔を上げ──ベルティーナを見つめると一言詫びて、ゆったりと話を切り出した。
「あの……私、ベルティーナ様の侍女として、翳りの国へお伴することになったのです……」
「あらそう? でも、私は侍女なんて頼んでいないわ。さっきも言ったわよね? 私は王女として育っていないのだから、大抵のことは一人でできるけれど」
──馬鹿にしてるのかしら。なんて鼻で笑うと、ハンナはすぐに首を振る。
「そういう命令なのです。つい先程、決まったばかりです。これに背けば私、処されるそうです」
処されるとはつまり、処刑だ。
その言葉を聞き、ベルティーナは無表情のままハンナを見据えた。
……果たしてどういった背景で、彼女まで翳りの国へ行かなければならなくなったのか。
同郷の者を一人侍らせた方が安心感もあるだろうとの気遣いか。しかし、得体の知れぬ異形の者たちの国へと連れて行かれるなど、完全に巻き添えだろう。運が悪すぎるとしか言いようもない。
そもそも、翳りの国は〝この世に存在しない〟異界。いわば、死者が向かうとされる冥界に近いもの。無論、人の住まう世界に容易く帰れるはずもない。
そう……無実の人間を、殺すようなものだ。
表情に出さずとも、ベルティーナは心の中で彼女の処遇を哀れんだ。
「私が直々に断るわ。これは私の婚姻のため。貴女にはまるで無関係なことでしょう? 詮ずる所、あの男の使用人が貴女の上役かしら?」
──侍女なんて要らないわ。