呪われし復讐の王女は末永く幸せに闇堕ちします~毒花の王女は翳りに咲く~
「だって、だって……ベルティーナ様、こんな場所に幽閉されて。使用人たちの間では本当は正気に戻らなかったとか……近々葬るだなんて噂もあったほどで」

 その言葉にベルティーナは固まった。
 なんだその噂は……。

「ちょっと待って。ミランから何も聞いてないの? 彼のお陰で理性は取り戻してるわよ。これは彼に課された罰。ただの仕置きよ?」

 驚いてベルティーナが告げると、ハンナはすぐに首を振った。
 しかし、ベルティーナの発言を聞いたリーヌは目を細めたまま顎に手を当てていた。

「いいえ、私たちは何も聞いてません。心配で心配で……無礼も承知で毎日のようにミラン様に聞いたのです。それにリーヌ様にも。でも何も知らないって。……ですが、先ほど即位の決闘に出向かうミラン様が観念して私に見張り塔(ベルグフリート)の鍵を渡して〝ベルをそろそろ出してやってくれ〟って言ったんです。……それで私が塔に向かう最中、リーヌ様に会いまして、ご一緒に」

 ことの流れを言い切ると、ハンナはリーヌの方を一瞥したが、リーヌはまだ腑に落ちないような表情を浮かべていた。

 考えれば考えるほど頭が痛くなってきた。まさか、とは思うが……ミランは自分を塔の中に閉じ込めていることなど誰にも言っていなかったのだろう。
 確か、仕置きを自分の手で下すと告げると言っていたのに……。

「ねえ、リーヌ。もしかして貴方も私が理性を取り戻した上で、ここにいることを彼から聞いてなかったのかしら?」

 リーヌに()けば、彼は目を細めたまま無言で頷いた。

「……え、じゃあ。どういうことなの、これは。彼から何て聞いたの?」
「〝決着はついた。少しベルの容態が良くないから、庭園の塔に閉じ込めて様子を見てる〟……と。それで、ベル様の理性が戻っているかを何度も聞いたものですが、何も答えなかったもので……」

 呆れたため息を一つ吐き出してリーヌは目を細めたが、ベルティーナもまったく彼の意図が理解できずに目を細めた。
 それから数拍置いた後、リーヌはため息をこぼし、緩やかに唇を開く。

「さて。僕が想像できるミランの思考の予想をいいですか?」
「ええ、構わないわ。どうぞ言ってちょうだい」

 ベルティーナの返事に、リーヌは一つ咳払いをした後に話を切り出した。

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