呪われし復讐の王女は末永く幸せに闇堕ちします~毒花の王女は翳りに咲く~
「……魔に墜ちたベル様と対峙したミランはかなりの手負いでしたよね? ベル様は理性を取り戻していた。で、誰にも言わずこんな手段に出るのは、早く確実に自分のものにしたかったっていう……あの拗れた独占欲ゆえの行動としか思えません」

 ──それで、ベル様を絶対に逃がさないようにするために、こうして既成事実でも作り、女王との決闘に死ぬ気で勝ちに行こうと鼓舞するためとしか思えないもので。

 そう、すべてを言い切ると、リーヌはまたしても深いため息をこぼした。

「そもそもですけど、初対面で僕がベル様に(かしず)いて手を取ろうとしたとき、あいつ何て言ったと思います? 〝それはやるな。俺もまだ手の甲にさえキスできてないから〟なんて言ってるんですよ」

 ──まったく酷い拗らせぶりだ。
 なんてこぼしつつ、リーヌはやれやれと首を振った。

 それを聞いてベルティーナはさらに頭が痛くなってきた。
 過去にしたことといえば……彼を助けただけだ。たったそれだけのことで……。本当にどうしようもない程に拗れているだろう。
 普段はあんなにすました顔をしているというのに……。

「ええと、殿方にこんなことを殿方に()くのははしたないかもしれないけど……魔性の者って婚前に関係を持つことって普通なのかしら?」

 困惑しつつこめかみを揉んだベルティーナはリーヌを一瞥して()くと、彼は顔を真っ赤に染めてぶんぶんと首を振った。

「そんなわけないじゃないですか! 基本的には正式なつがいとなってからです。ましてや決闘の前にもっての外。直系の王族はこの辺りは守って当然のしきたりです。ふしだらですよ、さすがに……」

 その言葉を聞いて、ベルティーナの思考は完全に停止した。
 だが、頬に滞った熱はたちまち弾けて、尋常ではない熱さを生む。

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