呪われし復讐の王女は末永く幸せに闇堕ちします~毒花の王女は翳りに咲く~
すると瞬く間にその身は闇に包まれ、ベルティーナは妖しくも華々しい竜の姿へと変貌する。
『王族の決闘の場は西の海の近くです』
ごうと咆哮をあげたリーヌに答え、相槌を打てば、その声は甲高い咆哮となる。
それでも一応は分かっているのだろう。リーヌはベルティーナの方を一瞥して頷くと、翼を広げて空へと飛び立った。
自ら竜の姿になることも空を飛ぶことだって自分の意志では初めてのはず。それでも自分の手足が動くことと同様に、それは意志のままに叶った。
城下の街を越え、川を渡り、やがて差し掛かるのは青々とした菩提樹並木だった。
その長い並木道を抜けると、ぱっと視界が開け、星屑と月明かりが煌々と光る夜の海に辿り着いた。そこでリーヌは旋回し、緩やかに下降した。
その瞬間だった。下方から低い咆哮が轟いたのである。
それは間違いなくミランのもので……。
ふと下方に視線を向けると、闘技場のような建物がある。その中心でそっくりな姿をした黒い竜が二匹戦っている様子が目に映る。大ぶりな竜が小ぶりな竜に首筋を噛まれ、夥しい血を流しているのが見えて、ベルティーナは目を瞠る。
間違いなくヴァネッサ女王とミランだろう。
──ミラン!
ベルティーナは急下降し、砂埃を巻き上げて闘技場に着地するなり、竜の姿を破り人の姿に戻った。
その様子に驚いたのだろう。夥しい観客はどよめき、次々に声を出した。
「──ふざけるんじゃないわよ! あんな馬鹿みたいな嘘をついて! しきたりまで破って! 大事なものを奪って! 貴方、何てことをしてくれたのよ! 負けたら……負けたら私、ミランのことを絶対に許さない!」
憎悪でも吐き出すよう、ベルティーナが声を張り上げたそのときだった。
『分かってる!』
咆哮と共にミランの声が響き渡ったのである。
その瞬間だった。彼は尾でヴァネッサ女王の身体を叩きつけ、身を翻して空に舞った。
そして、彼が息を吸ったそのときだった。彼の口からは碧翠の炎が揺らぎ、それは大きな火球となった。
刹那──彼は劈くほどの咆哮を発した。同時に火球は地面で構えるヴァネッサ女王に直撃し、彼女は吹き飛ばされた。
『王族の決闘の場は西の海の近くです』
ごうと咆哮をあげたリーヌに答え、相槌を打てば、その声は甲高い咆哮となる。
それでも一応は分かっているのだろう。リーヌはベルティーナの方を一瞥して頷くと、翼を広げて空へと飛び立った。
自ら竜の姿になることも空を飛ぶことだって自分の意志では初めてのはず。それでも自分の手足が動くことと同様に、それは意志のままに叶った。
城下の街を越え、川を渡り、やがて差し掛かるのは青々とした菩提樹並木だった。
その長い並木道を抜けると、ぱっと視界が開け、星屑と月明かりが煌々と光る夜の海に辿り着いた。そこでリーヌは旋回し、緩やかに下降した。
その瞬間だった。下方から低い咆哮が轟いたのである。
それは間違いなくミランのもので……。
ふと下方に視線を向けると、闘技場のような建物がある。その中心でそっくりな姿をした黒い竜が二匹戦っている様子が目に映る。大ぶりな竜が小ぶりな竜に首筋を噛まれ、夥しい血を流しているのが見えて、ベルティーナは目を瞠る。
間違いなくヴァネッサ女王とミランだろう。
──ミラン!
ベルティーナは急下降し、砂埃を巻き上げて闘技場に着地するなり、竜の姿を破り人の姿に戻った。
その様子に驚いたのだろう。夥しい観客はどよめき、次々に声を出した。
「──ふざけるんじゃないわよ! あんな馬鹿みたいな嘘をついて! しきたりまで破って! 大事なものを奪って! 貴方、何てことをしてくれたのよ! 負けたら……負けたら私、ミランのことを絶対に許さない!」
憎悪でも吐き出すよう、ベルティーナが声を張り上げたそのときだった。
『分かってる!』
咆哮と共にミランの声が響き渡ったのである。
その瞬間だった。彼は尾でヴァネッサ女王の身体を叩きつけ、身を翻して空に舞った。
そして、彼が息を吸ったそのときだった。彼の口からは碧翠の炎が揺らぎ、それは大きな火球となった。
刹那──彼は劈くほどの咆哮を発した。同時に火球は地面で構えるヴァネッサ女王に直撃し、彼女は吹き飛ばされた。