呪われし復讐の王女は末永く幸せに闇堕ちします~毒花の王女は翳りに咲く~
思ったままをベルティーナがきっぱりと述べる。すると、女王は目を大きく瞠り、また溌剌とした笑いをこぼした。
「はは、これは失礼したね。私が〝翳りの国〟を統べる女王、ヴァネッサだ」
「そう、ヴァネッサ女王。私はベルティーナと申すわ」
「そうかい。あと一つ言い忘れたな……」
ヴァネッサと名乗った女王は見惚れるほど美しい笑みを浮かべ、真っ直ぐにベルティーナを見据えると──十七の誕生日おめでとう、と淑やかな声で言った。
それを聞いたベルティーナは目を見開き、唖然としてしまった。
誕生日を祝われたなんて、いったい何年ぶりだろう。それも、他人に祝われたことなどない。ましてや、こんな真っ正面から……。
果たして、どんな反応をすればいいのかも分からず、ベルティーナは黙ったままだった。
しかし、女王はベルティーナが返事もしないことを気に留めていない様子で──
「さてと。今回は王女を引き取るだけが用件だ。もう用はない。参ろう」
と、召使いたちに示すと、彼女は漆黒のドレスの裾を揺らし、優雅な所作で踵を返す。
その途端だった。
「……し、失礼ですが女王陛下」
弱々しい声を出したのは一人の使用人──ハンナだった。
「ベルティーナ様の侍女として、私も貴女のお国にお伴いたします。その件、どうかご承諾いただけますでしょうか」
礼儀正しく、それだけ告げるとハンナは深々と頭を下げる。
すぐに女王は振り返るが、少しばかり唸り声を上げ、頤に手を当てた。
「何か問題がございますでしょうか……」
ハンナは真っ青な顔でおずおずと訊く。すると、女王は深いため息をつき、優しい面輪のままハンナに近づいた。
「こちらでも侍女は用意してあるがね。見たところ、王女はまだ魔に墜ちていない。確かに人と魔性の者の生活は大幅に違う。だからこそ、人の侍女がいた方が賢明なことだと私も思うが……」
そこまで言って、女王は言い淀んだ。
「何か問題があるのかしら?」
すかさずベルティーナが口を挟むと、女王は首を振って目頭を押さえ深く息をつく。
「はは、これは失礼したね。私が〝翳りの国〟を統べる女王、ヴァネッサだ」
「そう、ヴァネッサ女王。私はベルティーナと申すわ」
「そうかい。あと一つ言い忘れたな……」
ヴァネッサと名乗った女王は見惚れるほど美しい笑みを浮かべ、真っ直ぐにベルティーナを見据えると──十七の誕生日おめでとう、と淑やかな声で言った。
それを聞いたベルティーナは目を見開き、唖然としてしまった。
誕生日を祝われたなんて、いったい何年ぶりだろう。それも、他人に祝われたことなどない。ましてや、こんな真っ正面から……。
果たして、どんな反応をすればいいのかも分からず、ベルティーナは黙ったままだった。
しかし、女王はベルティーナが返事もしないことを気に留めていない様子で──
「さてと。今回は王女を引き取るだけが用件だ。もう用はない。参ろう」
と、召使いたちに示すと、彼女は漆黒のドレスの裾を揺らし、優雅な所作で踵を返す。
その途端だった。
「……し、失礼ですが女王陛下」
弱々しい声を出したのは一人の使用人──ハンナだった。
「ベルティーナ様の侍女として、私も貴女のお国にお伴いたします。その件、どうかご承諾いただけますでしょうか」
礼儀正しく、それだけ告げるとハンナは深々と頭を下げる。
すぐに女王は振り返るが、少しばかり唸り声を上げ、頤に手を当てた。
「何か問題がございますでしょうか……」
ハンナは真っ青な顔でおずおずと訊く。すると、女王は深いため息をつき、優しい面輪のままハンナに近づいた。
「こちらでも侍女は用意してあるがね。見たところ、王女はまだ魔に墜ちていない。確かに人と魔性の者の生活は大幅に違う。だからこそ、人の侍女がいた方が賢明なことだと私も思うが……」
そこまで言って、女王は言い淀んだ。
「何か問題があるのかしら?」
すかさずベルティーナが口を挟むと、女王は首を振って目頭を押さえ深く息をつく。