呪われし復讐の王女は末永く幸せに闇堕ちします~毒花の王女は翳りに咲く~
「……我らの国は人間には禁域。人間にとっては呪いの地。この地に踏み入った時点で、ベルティーナ王女と同じように魔に墜ちる呪いを受け、いずれ我らの同族となる。それぞれ呪いの発動に条件が異なるが、〝足りない何かが満たされた〟時点でそうなると言われている。墜ちてしまえば、もう二度と人に戻ることはできない……」

 信じられないような言葉だった。
 流石にそれには驚きを隠しきれず、ベルティーナはすぐにハンナに目をやった。

 ハンナの表情は何とも言えぬものだった。その表情は物語に描かれた〝処刑宣告された者〟を彷彿させるほど。彼女の面輪は、瞬く間に憔悴していった。
 暗い絶望に気が遠くなったのだろう。途端にハンナがふらりとよろけるので、ベルティーナはすぐに彼女の背を支えた。

「ちょっと貴女……!」

 ハンナの背は震えていた。呼吸は荒くはないが、あまりに浅い。彼女は一点を見つめたまま(まばた)きを一つもしない。

「貴女は……」
 ──やっぱり同行しなくて結構よ、とベルティーナが言い切る前だった。

「ええ、それで結構です。侍女として、その者の同行をご承諾くださいませ」

 淡々と言い放ったのは、男の使用人だった。

 ──なぜそんなことを言うのか。話は聞いていただろうか。
 ベルティーナはアイスブルーの瞳を吊り上げ、男の使用人を睨み据える。

 すぐに「認めない」と言い放とうとした途端だった。

「……構いません。同行の承諾をお願いいたします」

 ハンナは消え入りそうな声で発し、ベルティーナは唇を歪めた。

 すぐにハンナを自分の方に向かせようとするが、彼女はベルティーナの腕から離れ、女王に向かって礼儀正しい一礼をしてみせる。
 無理をしているのが目に見えて分かる。なにしろ、脚が震えているのだから。きっと、自分に突き付けられた無情な現実に必死に耐えているのだろう……。

 それを察したのは、女王も同じだろう。
 なにしろ、あまりに浮かぬ表情をしていたのだから。


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