呪われし復讐の王女は末永く幸せに闇堕ちします~毒花の王女は翳りに咲く~
 そうだ。翳りの国に行き、自分はそこでせいぜい上手くやっていこう。そうして、必ずこの国の王族に復讐しよう……。

 必ず、必ず……滅ぼしてやるわ。この憎悪を晴らさなければ。
 呪うように心の中で独りごちる。ベルティーナが心の内でほくそ笑んだと同時だった。

「さあ、もう話はついたことだ。長居するつもりもない」

 ──参ろう、と女王の声に促され、ベルティーナは顔を上げた。

 ベルティーナの瞳には深く冷たい憎悪が揺らいでいる。だが、元より冷々とした瞳なのだから、それに気づく者は誰一人としていなかった。

 ***

 カツカツ、カラカラ……と、小気味のよい蹄の音と車輪の音が車内に響いていた。
 その馬車を引くのは馬……ではあるが、一本の角を持つ奇妙な生き物だった。

 しかし、庭園暮らしのベルティーナは鳥類や虫以外の生き物をろくに知らないので、それに違和感を覚えたりはしなかった。
 車内では会話が皆無だった。
 今は真夜中だ。車窓から見える外の景色は真っ暗闇に包まれており、特に面白いものなどない。
 退屈なものだと、ベルティーナが一つため息を吐き出したと同時だった。

 突如、女王が御者に馬を止めるよう命じた。
 やがて小気味のよい蹄の音は止まり、馬車はぴたりと止まった。
 いったい何事か……。とは思うが、ベルティーナは動じることもなく、真正面に座した女王に視線を向ける。

「さて。ベルティーナ王女の侍女とやら……」

 女王はゆったりと切り出し、ベルティーナの隣に座したハンナに視線をやる。

 突然名指しされて驚いたのだろう。ハンナは(ども)った返事をした。

「あの空気だった。さっきは承諾せざるを得なかったものでな。様子を見ていれば分かるが、お前は無理やり我が国に送り込まれるようなものだろう。それにこの件、呪いが解けぬと分かった時点で王女を引き取ればよかったのだから、私にも責任がある」

 ──お前が人の世界に留まることを望むのであれば、今ここで下車させる、と女王は続けて本題を述べた。

 確かに女王の言う通り、呪われた時点で赤子の自分を翳りの国に連れていれば、こんなことにはならなかっただろうと思った。
 なぜかと──その件をベルティーナが突けば、「息子の子育てにあまりに忙しかった」と女王は少し恥じらいながらこぼした。

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