呪われし復讐の王女は末永く幸せに闇堕ちします~毒花の王女は翳りに咲く~
 ……何やら、翳りの国では乳母はおらず、女王であろうが我が子の面倒は自ら見るそうだ。また〝自分の種族ではこれは当たり前、なおさら〟と女王は簡潔に説明した。

 不可思議に思う点は多々あるが、これ以上()けば話が長くなるだろう。ベルティーナはそれ以上は話を折らずに、黙ることにした。

 そうだ。ハンナはこの好機に甘えればいい。呪われてもいないのに、みすみす人でなくなる必要などない。ベルティーナは願うように思う。しかし、ハンナはすぐに首を振るう。

「お心遣い感謝いたします、女王陛下。ですが、結構です。私はベルティーナ様にお仕えするため、共に翳りの国に参ると意を固めました」

 ハンナの返事はこれまでにないほどに、ハキハキした真っ直ぐなもの。
 ベルティーナは即座に彼女を睨み据えた。

「……貴女、本当に愚かね。これがきっと最後の好機でしょうに」
 冷たく吐き捨てるように言うと、ハンナはまた首を振る。

「ベルティーナ様。さっき言いましたよね? 私には帰る場所がありません。私の母国がヴェルメブルクに吸収されたのは割と最近。この国の民と認められるには、恐らくあと数十年と時間がかかります。ましてや、王城から逃げた者だと分かれば打ち首です。バレずとも普通に暮らせるはずがないです」
「だからと言って……他国に亡命するなり手段があるんじゃない?」

 尤もなことを言えば、ハンナはまたも首を振る。

「……ベルティーナ様、ご存じですか? 現在のヴェルメブルクの領地はとてつもなく広大です。国境だけでなく、街の境にも関所が設けてあります。海を渡るにしても身分を証明するものや莫大な資金も必要となります」

 ハンナの言葉に、ベルティーナはとうとう困窮してこめかみを揉んだ。
 
 ……本当に、どうしようもない国だと思った。その国の君主と自分が同じ血が流れていると思うと、吐き気さえ催す。
 だがこうも無関係な人間を巻き込むなど、自分としても気分が悪い。目を細めたベルティーナはやれやれと首を振る。

「私の場合は、物心ついたときから呪い持ちよ? 魔に墜ちる呪いは解けないと聞かされていた。だから行く末に覚悟がある。だけど貴女は違うわ。それにね、私だって翳りの国が、どんな場所かも分からなければ、魔に墜ちることがいかなものかも分からないのよ?」

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