呪われし復讐の王女は末永く幸せに闇堕ちします~毒花の王女は翳りに咲く~
「ええ。事実、自分がいつか人でなくなることはとてつもなく怖いと思いますよ。だけど、先に呪いを受けたベルティーナ様も同じ。そう思うと、そこまで怖くありません。一人では怖いでしょうが、二人なら怖くない理論です。それに私は……」

 ──貴女なら信頼できそうだと思えたので、ついていこうって思えたのです。
 ハンナが真っ直ぐに見つめ、真摯に付け加えるものだから、ベルティーナはさらに目を細めた。

「まったく……貴女は本当に愚かよ。出会って間もない年下の小娘をよくもまあ信頼できるものね。本当に意味が分からない」

 ふんと、ベルティーナが鼻を鳴らすが、ハンナは柔らかく微笑む。

「ええ。そうかもしれません。事実、ベルティーナ様の言葉に棘が多いとは思いますけど、根はとても温かい方だと思いましたから。そんな貴女をもっと知りたいと思いましたし、ヴェルメブルク城に留まるより、そばでお仕えできた方が、私はきっと幸せだろうと思いましたので」

 毅然と告げたハンナの言葉に、ベルティーナはまたも唇を拉げた。

 ──温かい? まるで心当たりもない。それどころか、薄汚いこの国に報復を与えてやろうと目論み始めているのだ。
 確かに、彼女の境遇には同情した。だが、それを優しいと判断されるのもおかしいだろう。
 少しばかり煙たく思って、ベルティーナが舌打ちをした途端──今の今まで傍観していた女王が一つ咳払いをし、二人をそれぞれ見る。
 別に怒っているような視線ではないが、何だか困っているような雰囲気だ。

 ……翳りの国や魔性の存在を非難しているように聞こえたのだろうか。それに、少し長話になってしまっただろうか。
 そうは思うが、気の利いた言葉など言えない。ベルティーナは女王から視線をそらし、車窓に腕を乗せ頬杖をつく。

「申し訳ございません。翳りの国を悪く言う気はございませんが……自分が魔に墜ちることを不安に思うことは事実で」

 ハンナは素直に詫びを入れるが、女王はすぐに首を振るう。

「そう思うのが普通さ。〝魔性の者がヴェルメブルクに踏み入れば呪いを受け、魔力を失いやがて、ひ弱な人間になり果てる〟だの言われたら、私だって同じような反応をするだろうさ。まったく気にしていない。ただな……夜が明ける前に帰りたくてな」

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