呪われし復讐の王女は末永く幸せに闇堕ちします~毒花の王女は翳りに咲く~
だが、侵略は十七年前にぴたりと止まった。
何が起きたかと言えば、先の戦火が〝翳りの国〟と呼ばれる魔性の者たちが住まうとされる異界に通じる森を焼き、樹木や草花に宿る妖精たちを怒らせたのだ。
しかし、彼らはそれ以上の報復を行わず、生まれたばかりの王女に〝いずれ魔に墜ちる〟呪いをかけた。
──この国は近い未来に滅ぶわ! きっとこの王女がこの国を滅ぼす!
いい気味だと、妖精たちは嘲笑って去ったらしい。
それから幾日か経ち、翳りの国を統べる女王がヴェルメブルク城にやって来たそうだ。
来訪者の姿は皆、異形。女王も妙齢の美しい女の姿をしてはいるものの、逞しい巻き角を生やし、目元や手に鱗を持つ、なんとも奇っ怪な姿をしていたそうだ。
翳りの国からの来訪者に、当然のように王城は騒然としたが、その気迫からさらなる報復を恐れ、誰もが彼女の来訪を拒まなかった。
しかし、女王の来訪理由はあまりに予想外──王女にかけられた呪いを解くことができないかとやって来たのだ。
つまりは、自分の国の者が勝手に起こしたことへの尻拭い。いくら報復を与えるにしても、罪なき赤子を呪うなどいかがなものかと思ったそうだ。
しかし、王女にかけられた呪いは強い憎悪の念で結ばれ、翳りの国で最も強い力を持つ女王でも手に負えないほどだったらしい。
呪いが解けぬならば、王女はいずれ魔に墜ちる運命を辿ることになる。だが、そうなってしまえば、人の住まう世界に置いておけるはずもない。
果たして、どうしたらいいものか……。
王族たちは皆、深い悲しみに暮れ、「愚かなことをした」と自分たちの行いを悔い、生まれたばかりの王女を囲ってさめざめと泣いたらしい。
そのとき、翳の女王は一つ提案を持ちかけた。
──その娘が齢十七を迎えたころ、我が息子の妻として翳りの国に迎え入れよう。それで先の戦の飛び火を赦し、これ以上の干渉や報復を与えぬことを約束しよう。それを和平の証にする。……と。
国の希望とも呼べる第一王女を翳りの国に嫁がせるなど、当然のように誰もが悲嘆した。しかし、もうそれ以外に国と王女の救いはなかった。そうして、ヴェルメブルクの王族たちは皆それに承諾したことにより、翳りの国の脅威が消え去ったと言われている。
何が起きたかと言えば、先の戦火が〝翳りの国〟と呼ばれる魔性の者たちが住まうとされる異界に通じる森を焼き、樹木や草花に宿る妖精たちを怒らせたのだ。
しかし、彼らはそれ以上の報復を行わず、生まれたばかりの王女に〝いずれ魔に墜ちる〟呪いをかけた。
──この国は近い未来に滅ぶわ! きっとこの王女がこの国を滅ぼす!
いい気味だと、妖精たちは嘲笑って去ったらしい。
それから幾日か経ち、翳りの国を統べる女王がヴェルメブルク城にやって来たそうだ。
来訪者の姿は皆、異形。女王も妙齢の美しい女の姿をしてはいるものの、逞しい巻き角を生やし、目元や手に鱗を持つ、なんとも奇っ怪な姿をしていたそうだ。
翳りの国からの来訪者に、当然のように王城は騒然としたが、その気迫からさらなる報復を恐れ、誰もが彼女の来訪を拒まなかった。
しかし、女王の来訪理由はあまりに予想外──王女にかけられた呪いを解くことができないかとやって来たのだ。
つまりは、自分の国の者が勝手に起こしたことへの尻拭い。いくら報復を与えるにしても、罪なき赤子を呪うなどいかがなものかと思ったそうだ。
しかし、王女にかけられた呪いは強い憎悪の念で結ばれ、翳りの国で最も強い力を持つ女王でも手に負えないほどだったらしい。
呪いが解けぬならば、王女はいずれ魔に墜ちる運命を辿ることになる。だが、そうなってしまえば、人の住まう世界に置いておけるはずもない。
果たして、どうしたらいいものか……。
王族たちは皆、深い悲しみに暮れ、「愚かなことをした」と自分たちの行いを悔い、生まれたばかりの王女を囲ってさめざめと泣いたらしい。
そのとき、翳の女王は一つ提案を持ちかけた。
──その娘が齢十七を迎えたころ、我が息子の妻として翳りの国に迎え入れよう。それで先の戦の飛び火を赦し、これ以上の干渉や報復を与えぬことを約束しよう。それを和平の証にする。……と。
国の希望とも呼べる第一王女を翳りの国に嫁がせるなど、当然のように誰もが悲嘆した。しかし、もうそれ以外に国と王女の救いはなかった。そうして、ヴェルメブルクの王族たちは皆それに承諾したことにより、翳りの国の脅威が消え去ったと言われている。