呪われし復讐の王女は末永く幸せに闇堕ちします~毒花の王女は翳りに咲く~
 しかし、翳の女王は一つだけ奇妙な言葉を残した。「十七年後、私が迎えに来るまで、その娘の心を満たしてはならない」と、釘を刺すように言ったらしい。

 そうして王女は、王城専属薬師の偏屈な賢女に引き取られた。

 暮らしの場は王城敷地内の庭園──古ぼけた見張り塔(ベルグフリート)の中。
 女王の言いつけ通り、賢女は必要以上の愛を与えずとも、王女を手塩にかけて大切に育てた。しかし、王女が十二歳になったころ、賢女は老衰で亡くなり、幼い王女は独りぼっちで生きることとなった。

 ──それから五年の月日が流れ、幼かった王女は息をのむほど美しい娘へと成長した。
 腰まで届く亜麻色の髪は、柔らかな波を描き、透き通る白い肌には氷のようなアイスブルーの瞳が宿る。その冷ややかな美貌は、見る者の心を一瞬で奪うほどだった。

 だが、孤独の中で育ったベルティーナの心は、感情をほとんど映さなかった。彼女の性格は氷の刃のように鋭く、愛想などまるで存在しないかのようだった。

 口を開くことは稀で、その言葉にはいつも棘が潜み、毒のような冷たさがにじむ。稀に庭園を訪れる召使いたちは、彼女の視線だけで震え上がるほどだった。

 ──薔薇の茨では生ぬるい。その冷ややかさはまるで毒。そんな喩えさえされたそうだ。

 毒をさらに彷彿させるのは、彼女の名のせいもあっただろう。

 美しく聡明な子になってほしい……。
 呪われる前の娘に王は「ベルティーナ」と願いを込めて名付けたが、その名は毒花「ベラドンナ」と綴りが似ていることから、いつからか彼女は「毒花の王女」と囁かれるようになった。
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