呪われし復讐の王女は末永く幸せに闇堕ちします~毒花の王女は翳りに咲く~

第8話 紫のドレスと侍女の賛美

 ……途方もなく可愛いと思う。こんなに可愛い生き物はこれまで見たこともない。しかし、どう対応してよいか分からず、ベルティーナはすぐに彼女から視線を逸らした。

「え、えぇ……とても美味しいわ」
「本当です、よかったー!」

 それはもう両手を上げて言うものだから、あまりに可愛い。

 だが、本気でどう反応したらよいか分からず、ベルティーナは居心地の悪さを感じ、一つ咳払いをして仕切り直した。

「まして安眠や鎮静の効能があるカモミールを選んでくれたのはとてもありがたいわ」

 ベルティーナはそっけなく言うが、彼女はまたも嬉しそうににっこりと笑んだ。しかし、すぐに不思議に思ったのか、「効能?」と疑問符を浮かべながら小首を傾けた。

「あら? この国ではあまり一般的でないのかしら。ハーブティーは色や香りを楽しむだけでなく、それぞれに様々な効能があるのよ。人の世界では薬として用いられるほどで、煎じて飲むだけでなく……」

 淡々とベルティーナが話すと、ロートスはさらに目をキラキラと輝かせた。

「すごい、すごい! ベルティーナ様って色んなことを知ってるんですね! 本当に、本当にお姫様なんですか!」

 無表情は崩さないままではあるが……言われた言葉に、ベルティーナは心の中でぽかんとした。自分の言ったことは、ごく常識的なことだと思ったのだが……。

「ええ……一応はそうだけど。入浴も一人でさせてくれた点で、私と来た人間の侍女から聞いてない? ヴェルメブルクでは私は王女の扱いなんてされてこなかったの。庭園暮らしの生活よ? 薬草学だけはそれなりの知識を持っているわ」

 皮肉な事実を述べて、ベルティーナは残りのカモミールミルクをすべて飲み干した。
 ナプキンで口元を拭い、ことりとカップを置くと、ロートスはすぐにそれを取り、相変わらず目を輝かせている。

「ベルティーナ様のお話をもっといっぱい聞かせて欲しいです!」

 そう言ってロートスが詰め寄るものだから、ベルティーナはまた少しばかり退いた。
 やはりこの距離感には慣れない。それに、恐れられずにこうも興味を持たれるなど不思議に思えてしまう。だが、それがほんの少しだけ嬉しく思えて、ベルティーナは唇をわずかに綻ばせた。

「……それはそうと。貴女はあと数時間もすれば起きて仕事なんでしょう?」

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