呪われし復讐の王女は末永く幸せに闇堕ちします~毒花の王女は翳りに咲く~
 ……確かに綺麗だとは思うし、妖艶ながらも可愛らしいとも思う。だが、奇抜すぎやしないだろうか。ベルティーナは目を細めてそのドレスをじっと見据えた。
 これまでの普段通りの装いといえば、くるぶしまで隠れるほどの丈の長い地味なワンピースばかりだ。それが今日、この露出では気が引ける。

「どーです? お気に召しません?」

 そう()くのは双子の片割れのどちらか。

「どうですって……さすがに破廉恥で奇抜じゃない?」

 ベルティーナは目を細めたまま言うと、もう片割れが「何をおっしゃるのですか!」とベルティーナの前に詰め寄った。

「ああん……もう! ベルティーナ様! この国ではこの形状のドレスってごく一般的なのです! それもこちらのドレスは一級品! この国屈指の凄腕お針子様が縫ってるのです! それにこのドレス! ミラン様がすべてお選びになったもので!」

 あまりに真剣に詰め寄るものだから、ベルティーナは一歩退いてしまう。

 しかし、ミランと……。
 自分の婚約者が選んだものとなれば、いちいち拒否するのもよくないだろう。
 この国でうまくやっていくことがまずは第一の目標なのだから……。

「……わ、わかったわ。それの着付けを頼むわ」

 さすがに奇抜すぎると思うが、拒む権利もない。ベルティーナは渋々、合意に頷いた。

 そうしてしばらく。身支度の整ったベルティーナは姿見の前で目を細めていた。

 ……いくらなんでも奇抜で派手だろう。そうは思うが、猫耳の侍女と人間の侍女は感嘆の目でベルティーナの姿を見つめていた。

「は~とてつもなく妖艶で美しいです」
「とてもお綺麗ですね」

 そんな言葉を言われるが、ベルティーナは納得いかない様子でため息をこぼした。
 左右非対称の裾は、ベルティーナが思った以上に大胆で、脚を大きく露出していた。
 太腿丈の黒地のレースストッキングをガーターで留めているが、それでも素肌が大きく見えてしまい、少しばかり破廉恥に思う。しかし、驚いたのは頭部の装飾だ。こちらもドレスに付いた蝶の翅装飾と同じで、随分と大ぶりなものだった。

 それに、髪を高く結い上げたこともあって、背中だって本当に丸見えで……。

(似合う似合わないはさておき。さすがにこれはどうかしらね)

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