呪われし復讐の王女は末永く幸せに闇堕ちします~毒花の王女は翳りに咲く~
「……っ! ベル様お怪我は!」
「あ……ぁ、リーヌ?」

 リーヌは駆け寄るなりベルティーナの身を起こし上げ、ミランはハンナだった獣の前に立つ。

「もう大丈夫です。この者はベル様の付き人ですよね……魔に墜ちたばかりで?」
「ええ……」
 
 返事するが、発したベルティーナ本人でさえ、情けないと思う程に震え上がっていた。

「……案の定、理性を失ってるな。俺が引きつけて対峙する。リーヌはベルを城に」

 ──ベルの事を頼んだ。と、ミランは振り向かずに言い添える。
 その口調はいつもの平坦なものではなく、示唆に慣れた尊厳たるものだった。それにさえ驚嘆してしまうが……「理性が消えてる」「引きつけ対峙する」という言葉が嫌に引っかかる。

「ハンナを……ハンナをどうするの!」

 ベルティーナはミランの背中に叫ぶが、彼は何も答えなかった。

「説明は後で。兎に角、貴女は逃げましょう。ここに居ては危険です」

 リーヌは毅然と告げると、ベルティーナの腕を強引に引いて駆け出した。 


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