呪われし復讐の王女は末永く幸せに闇堕ちします~毒花の王女は翳りに咲く~
第12話 血の臭いに凍える心
──リーヌに連れられ、城の中に戻ると、酷い騒動が起きていた。「何が起きたか」「無事だったか」と、使用人たちがリーヌに問い詰めるが、彼女はそれを遮り、無言のままベルティーナを部屋まで連れていった。
部屋につくなり、先に戻って茶の支度をしていた双子の侍女たちはぎょっとした表情で出迎えた。
「ベル様! この騒ぎは何ですの!」
「ハンナはどうしたのです!」
双子は次々に捲し立てるが、ベルティーナは言葉が出せなかった。
……魔に墜ちたのだと思う、と伝えようとするが、頭が混乱するばかりで言葉が出てこない。すると、リーヌが代わりにハンナが魔に墜ちた事実を伝え、二人に退席するよう言った。
「ベル様、まずは落ち着いて聞いてください。ただの人が魔に墜ちると、まずは理性を失います。それで理性を取り戻す者もいれば、そうでない者もいます。ミランは彼女に頭を冷やしてもらうために真っ正面から対峙しています」
双子が去ると、リーヌは緩やかに語り始めた。
「理性が戻らなければ彼女はどうなるの……」
思ったままを訊くと、彼女は首を振るばかりで何も答えなかった。
ただそれだけで、嫌に胸の奥が痛くなった。これまで感じたことのない途方もない焦燥が暴れ回り、苛立ったベルティーナは彼女を睨み据えた。
「──っ! どうなるのと聞いてるのよ!」
荒々しく言い放つと、リーヌは眉根を寄せて瞑目する。
「……この世界に祝福されなかったと見なされ、僕たちの手で葬ります」
一拍置いて、彼女が区切り区切りに出した答えに、ベルティーナは目を瞠った。
──葬る……つまり殺すのだと。
それを理解すると、たちまち指先が冷たくなり、ベルティーナは身を震わせた。
次第に身体が重くなり、崩れ落ちそうになる。だが、それをリーヌに抱き留められ、ソファに座るよう促された。
「そうならないように祈るしかないです。ですが、彼女の心を……今対峙しているミランをどうか信じてあげてください」
そう言って、隣に腰掛けたリーヌは宥めるようにベルティーナの背を撫でた。
他人に触れられることを極度に嫌がるベルティーナではあるが、リーヌに背を撫でられて幾分か心は落ち着いた。
そうして、どれほど時間が経過したのだろう……。
部屋につくなり、先に戻って茶の支度をしていた双子の侍女たちはぎょっとした表情で出迎えた。
「ベル様! この騒ぎは何ですの!」
「ハンナはどうしたのです!」
双子は次々に捲し立てるが、ベルティーナは言葉が出せなかった。
……魔に墜ちたのだと思う、と伝えようとするが、頭が混乱するばかりで言葉が出てこない。すると、リーヌが代わりにハンナが魔に墜ちた事実を伝え、二人に退席するよう言った。
「ベル様、まずは落ち着いて聞いてください。ただの人が魔に墜ちると、まずは理性を失います。それで理性を取り戻す者もいれば、そうでない者もいます。ミランは彼女に頭を冷やしてもらうために真っ正面から対峙しています」
双子が去ると、リーヌは緩やかに語り始めた。
「理性が戻らなければ彼女はどうなるの……」
思ったままを訊くと、彼女は首を振るばかりで何も答えなかった。
ただそれだけで、嫌に胸の奥が痛くなった。これまで感じたことのない途方もない焦燥が暴れ回り、苛立ったベルティーナは彼女を睨み据えた。
「──っ! どうなるのと聞いてるのよ!」
荒々しく言い放つと、リーヌは眉根を寄せて瞑目する。
「……この世界に祝福されなかったと見なされ、僕たちの手で葬ります」
一拍置いて、彼女が区切り区切りに出した答えに、ベルティーナは目を瞠った。
──葬る……つまり殺すのだと。
それを理解すると、たちまち指先が冷たくなり、ベルティーナは身を震わせた。
次第に身体が重くなり、崩れ落ちそうになる。だが、それをリーヌに抱き留められ、ソファに座るよう促された。
「そうならないように祈るしかないです。ですが、彼女の心を……今対峙しているミランをどうか信じてあげてください」
そう言って、隣に腰掛けたリーヌは宥めるようにベルティーナの背を撫でた。
他人に触れられることを極度に嫌がるベルティーナではあるが、リーヌに背を撫でられて幾分か心は落ち着いた。
そうして、どれほど時間が経過したのだろう……。