呪われし復讐の王女は末永く幸せに闇堕ちします~毒花の王女は翳りに咲く~
「いらない。染みるの嫌だし……この程度で大袈裟。舐めときゃ直る。報告したらすぐに部屋に戻りたかったし」
彼の言った言葉に、ベルティーナは呆れてしまった。
「今更だけど貴方、歳はいくつ?」
「もうすぐ二十になる……」
「そう。私よりも二つも年上だし、いい大人ね……染みるのが嫌なんて、子どもみたいなことを言わないでほしいわ」
ベルティーナはため息混じりに言うが、彼は首を振ってさらに目を細めた。
「いらない。だから大袈裟。処置をしてもらうにしても、リーヌにやってもらった方がいい」
──こんなのベルに任せられない、なんて付け加えて、ミランはベルティーナに目もくれずに言い放った。
それを聞いて、ベルティーナは心の中で唖然とした。だが、これで確信に変わったのだ。自分は微塵も信用されていない。やはり望まぬ婚約者なのだと。そして、引き合いに出したリーヌこそが彼の本当に愛する相手だと……。
それに、リーヌだって、よろけた自分を支えたミランに対して「離れろ」と言っただろう。血で汚れるとは表向き。本当の意味では、嫉妬していたようにさえ今更ながら窺えてしまう。
「そう。じゃあリーヌにしてもらってちょうだい」
心の動揺を悟られぬよう、ベルティーナは丁寧な所作でリーヌに消毒薬と傷薬を手渡した。
そうして間もなく、二人は夫婦の部屋の通路を歩んでミランの自室へと行った。
(これで、もう本当に分かったわ。あの人とリーヌは恋仲で……)
その背中を見つめ、ベルティーナは一つため息をこぼした。
思い返せば、そう言われたことは当然のことのように思う。どちらか選べと言ったら、思い人に処置してもらった方が嬉しいだろうと思う。
けれど、あそこまできっぱりと言われたことは衝撃だった。
ベルティーナは浮かぬ顔のまま、二人の消えた通路を見つめ、また一つ深い息をつく。
(私は、どうしてこの国に来たのかしら)
心の中でぽつりと独りごちて、ベルティーナはうなだれるようにソファに腰掛けた。
「復讐」という理由は後からできたもの。
そもそも目的は、決められた婚姻を果たすことだった……。腹の中になんとも言えぬ不快が渦巻き、ベルティーナは唇を噛んだ。
結婚がいかなるものか、本の中の知識で知っていた。
彼の言った言葉に、ベルティーナは呆れてしまった。
「今更だけど貴方、歳はいくつ?」
「もうすぐ二十になる……」
「そう。私よりも二つも年上だし、いい大人ね……染みるのが嫌なんて、子どもみたいなことを言わないでほしいわ」
ベルティーナはため息混じりに言うが、彼は首を振ってさらに目を細めた。
「いらない。だから大袈裟。処置をしてもらうにしても、リーヌにやってもらった方がいい」
──こんなのベルに任せられない、なんて付け加えて、ミランはベルティーナに目もくれずに言い放った。
それを聞いて、ベルティーナは心の中で唖然とした。だが、これで確信に変わったのだ。自分は微塵も信用されていない。やはり望まぬ婚約者なのだと。そして、引き合いに出したリーヌこそが彼の本当に愛する相手だと……。
それに、リーヌだって、よろけた自分を支えたミランに対して「離れろ」と言っただろう。血で汚れるとは表向き。本当の意味では、嫉妬していたようにさえ今更ながら窺えてしまう。
「そう。じゃあリーヌにしてもらってちょうだい」
心の動揺を悟られぬよう、ベルティーナは丁寧な所作でリーヌに消毒薬と傷薬を手渡した。
そうして間もなく、二人は夫婦の部屋の通路を歩んでミランの自室へと行った。
(これで、もう本当に分かったわ。あの人とリーヌは恋仲で……)
その背中を見つめ、ベルティーナは一つため息をこぼした。
思い返せば、そう言われたことは当然のことのように思う。どちらか選べと言ったら、思い人に処置してもらった方が嬉しいだろうと思う。
けれど、あそこまできっぱりと言われたことは衝撃だった。
ベルティーナは浮かぬ顔のまま、二人の消えた通路を見つめ、また一つ深い息をつく。
(私は、どうしてこの国に来たのかしら)
心の中でぽつりと独りごちて、ベルティーナはうなだれるようにソファに腰掛けた。
「復讐」という理由は後からできたもの。
そもそも目的は、決められた婚姻を果たすことだった……。腹の中になんとも言えぬ不快が渦巻き、ベルティーナは唇を噛んだ。
結婚がいかなるものか、本の中の知識で知っていた。