呪われし復讐の王女は末永く幸せに闇堕ちします~毒花の王女は翳りに咲く~
 ──何もできなかった、とベルティーナが心の内を打ち明けると、彼女はすぐに首を振った。

「突然でしたし、あんなのどうにもなりませんよ」
「そうは言っても……」

 ベルティーナは言い淀む。するとハンナは、ほぅと一つため息をこぼした。

「なんだかベルティーナ様がそんな調子だと、私まで調子が狂うので、いつも通りの高慢な感じでいてくださいよ」

 そう言われて、ベルティーナがハンナの方を向くと、彼女はにこりと笑んでいた。
 高慢……そんな態度だっただろうか? そっけなくて、反応が薄い自覚は大いにあるが……。

「私、そんなに高慢かしら?」
(たと)えですよ。実際そうでもないでしょうけど、喋り方のせいでしょうかね?」
「……貴女、随分と言うようになったわね」

 目を細めてベルティーナが言うと、「そういうところですよ」と彼女が笑むものだから、なんだか無性に恥ずかしくなり、ベルティーナは紅潮してしまった。

「ベルティーナ様、本当に表情が豊かになりましたね」

 そんな風にまたハンナにからかわれて、ベルティーナは彼女を睨んだ。

 ……確かに、そうだろうとは思う。他人と関わるようになって、少しばかり自分が変わった自覚はあった。しかし、それが良いことか悪いことかは分からない。
 いよいよ反応に困り黙ってしまうが、仕切り直すように「そういえば……」と、ハンナが切り出した。

「何より、私が魔に墜ちたことでミラン様が大きな怪我を負ったようで……。リーヌ様が訪れたときにそれを聞き、彼も気にしていないから気に病むなとは聞きましたが」
「そうね。かなりの大怪我だったわ。だけど、その件はミラン王子はまったく気にしていない様子だったわ。だから貴女は気に病まなくて良いと思うわ。理性もなかったんですもの。どうすることもできなかったでしょう」

 そっけなく淡々とベルティーナは言葉を並べると、彼女は黙って頷いた。
 そうして、ハンナといくらか他愛もない会話をした後、ベルティーナは彼女の部屋から出た。確か、リーヌが待機していると言っていたが……。

「……面会、もういいのか?」

 ハンナの部屋の前で待っていた者はリーヌではなくミランだった。久しぶりに彼を見ただろう。ベルティーナはミランを見るなり息を飲む。

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