呪われし復讐の王女は末永く幸せに闇堕ちします~毒花の王女は翳りに咲く~
 心配そうにリーヌに呼ばれるが、それでもベルティーナは言葉が出なかった。それを見かねたのだろうか……。

「ベル、どうした? 具合が悪いのか?」

 ミランの声が間近から落ちてきた。そう思ったのも束の間、間近に彼のビリジアンの瞳が映り、顔を覗き込まれたと分かった途端、ベルティーナははっと目を(みは)った。

「どうしたベル? すごい目が赤い……どうして泣いてるんだ?」

 彼は手を伸ばし、滲んだ涙を掬おうとした途端──ベルティーナはミランの手を払い除けた。
 そのとき、ちょうど昇降機が止まり、上層階へ辿り着くベルが鳴る。

「──私に……もう私に構わないでちょうだい!」

 冷たく吐き捨てたベルティーナは、昇降機の扉を掴み開けるなり、部屋に向かって駆け出した。
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